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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.8  HRMの創り方(2)簡単にマネされるものと、そうでないもの

価格よりブランド

 ビジネス・モデルで競争する場合、肝心なことは、競争相手が簡単にはマネが出来ない特徴を持っているかどうかである。同じようなビジネス・モデルの競争相手がどんどん出てくるようでは、事業を持続可能とする利益を確保することが難しい。特に、実際の店舗やオフィスなどを構える必要がないので、新規参入コストが安いネットビジネスの場合はそうである。

 対象とするお客は一般消費者、提供する価値も低価格といった、ごく普通なビジネス・モデルの場合、差別化は商品ではなく競争の仕方で果たさなければならない。例えば、市場にいち早く参入したなどの先行優位性を活かして素早くシェアを確保するとか、豊富な資金力に物を言わせ広告宣伝を盛大におこない、商品名の認知度をあげるとかが、競争相手に勝つための方策となる。

 ブランドとは、高品質、使い勝手が良い、故障が少ないなど、その企業に独特なイメージを買い手に想起させるもののことだが、ブランドで競争する方が、価格で競争するよりはマネされにくい。ブランドの確立には時間とお金がかかるからだ。しかし、大幅な値下げや販売奨励金の増額、新製品の投入などで、競争相手がシェアを取り戻すことは可能であるから、ブランドが確立すれば安泰というわけではない。ブランドを確立するという手法はマネが可能なのである。

特許やノウハウによる新規参入の制限

 マネのしにくい高性能な製品で勝負しようとすると、研究開発コストや製造コストがかさみ、高価格の製品になりがちである。そのため販売量が限られ、利益を確保するの難しいという現象がおこる。しかし、競争相手が少なければ、なんとか利益はあげることはできよう。
 そこで、特許や製法のノウハウをおさえ簡単にマネができないようにし、競争相手が新規参入するのを妨げる方策がとられる。しかし、時間の経過とともに特許を回避する方法や新しい製造方法が見つけられてしまう可能性は否定できない。マネをしにくいビジネス・モデルを作るのは簡単ではない。
 

お客さんとの良好な関係が鍵

 商売の仕方も製品もマネされやすいとすると、もっとマネされにくいものは何か、を考えてみなければならない。お客さんは一般の消費者、商品の価格も一般的といった事業の場合、どこで買ってもあまり差異がないので、近所の、店員さんもよく知っているお店で買う、店員の対応が親切なところで買う、といった選択になる。買いやすいところが選ばれるのだ。

 お客さんは一般の消費者でも、商品が多少専門的なもの、例えばジョッギング・シューズのようなものになれば、いろいろ相談したくなるので、商品知識が豊富な店員さんがいる店が選ばれる。趣味性や専門性が高くなり、買い手の方も相当の商品知識が豊富な場合は、問題の解決、この時期の渓流つりにはこういう装備が便利だとか、その故障はこういう方法で修理できたなど、適切な情報を提供してくれるセールスの人がいるところが選ばれる。
 要は、お客さんと良好な関係が維持できる従業員がいるところが、どの場合でも有利である。従って、そういう従業員を育てられる、あるいは、確保出来るかどうかが競争の鍵となる。
 

マネされにくいのは文化

 お客さんと良好な関係を保つことが出来る従業員をたくさん育てるためには、組織全体として、お客さんとの良好な関係が大切という価値観が共有されていることが必要である。

 お客さんとの関係についてのたくさんの具体的エピソードや伝説が、語り継がれているだけでなく、採用の仕方から配置、教育訓練、評価制度までが、お客さんと良好な関係を維持できる人材を高く評価するように創られていなければならない。
 これらが総合されたものを企業文化と呼ぶとすると、企業文化は、一朝一夕で出来るものではないことは、明らかである。簡単にはマネをすることはできないのだ。
 

企業文化を支援するHRM

 人材マネジメントの歴史は、企業の業績に大きく影響することに貢献が求められてきた歴史である。ビジネス・モデルで競争する時代は、簡単にはマネされないことが企業の業績を左右する。簡単にマネのできないことはいろいろあるが、なかでもマネしにくいものは企業文化である。

 そうしてみると、ビジネス・モデルを支援するHRMとは、もう少し丁寧に言えば、「マネされにくい企業文化の形成を支援するHRM」ということになる。だがHRMは簡単にマネできないのであろうか、HRMの創り方を考える際、次にこのことが疑問となってくる。

 

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