組織にとって文化が大切な理由は、文化には過去の経験から生まれた知恵がたくさん含まれているからだが、理由はそれだけではない。文化は簡単にマネすることが難しいのだ。HRMの個々のやり方、例えば採用の方法や処遇制度などは、マネすることは、実は、それほど難しくはない。コンサルタントを雇って、良い方法を教えてもらうことも出来るし、企業間でお互いに方法を公開しあいよりよい方法を見つけ出す、ベンチマークという手法も採用可能である。
しかし、採用した施策の束全体となると、全体として狙うものがビジネス・モデルによって異なるので、同じ組み合わせは見つけにくい。まして、施策の束が時間をかけて創りだした「組織学習の結果としての企業文化」は、直ぐにはマネすることは出来ない。外部環境が大きく変化したりして、ビジネス・モデルを変更しなければならない時は、当然、企業文化を変更するという作業が必要になるのだが、長年にわたって学んだことを放棄することは簡単に出来ない。歴史が長い企業のビジネス・モデルの変更が簡単ではないのはこのためである。