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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.13  人材の特定(3)プロも見習いも、速い人もスローな人も 

人材の特定が生む課題

 「仕事は大変だが面白いというコンセプトに賛成する人、この指とまれ」と人々を集めた場合、二種類の人が集まると想定される。既に一人前の専門家として仕事が出来る人材と、そういう自律的プロ人材を目指して修行の機会を掴みたいと考える人材である。後者は、始めは小さい範囲の仕事を担当するが、成長とともに仕事の領域を拡大していき、やがて一人前の専門家に成長する。

この方式を採用した場合のHRMは、二種類の採用方法、二種類の処遇制度を想定する必要がでてくる。
一人前の専門家を採用する場合は、この仕事をして欲しい、と仕事別に採用することになるし、専門家を目指す人は、学習能力や体力、人柄といった資質で選ぶことになる。給与その他の処遇も見習いとしてものになる。当然のことながら、見習い経由で入社した人も、一人前の専門家に育った暁には、仕事別賃金に移行するので、二制度が必要なのはキャリアの初期段階である。
 

複数専門家路線

 一人前の専門家として仕事を続けて行くとそのうち、自分の好きな特定の技術や知識分野を専門とする人と、マネージするものが変化や企業文化である専門家に分かれる。

従来議論された専門職議論は、ゼネラリストとスペシャリストの議論だが、この議論が成り立ったのは、競争の仕方が単純で、どの企業も価格と品質で戦い、経済成長と多くの競争制限的規制のお陰で、戦略が不在でも生き残れた時代だからである。既にコラムVol.2からVol. 5の「概ねの方向を決める手がかり」で検討したように、ビジネスモデルで競争する時代には、グローバリゼーションという変化を考慮にいれつつ、誰に何を売るか、どうやって競争に勝つかを考えかつ実行しなければならず、強いリーダーシップが要求される。経営者はもはやゼネラリストではなく、マーケティングと戦略に詳しい「変化をマネージするスペシャリスト」であることが求められる。HRMの専門家、経理の専門家、営業や製造の専門家と同じように、「専門の教育と専門の訓練が必要な専門職」でなければ、ならないのだ。

特定の技術や知識分野の専門家と経営の専門家に別れるキャリア上の分岐点は、自分と他人のマネージだけでなく、そこにビジネスのマネージが加わってしばらくしたあたりと考えられる。それまでは両者のキャリアに大きな差はないが、この時期以降、経営の専門家を目指す向きは、新たな訓練と実践に直面することになる。別法人に出向したりするケースも多く、処遇制度もそれらに対応した特別なものにならざるをえず、再び複数路線が必要になる。
 

高速路線と低速路線

 この指とまれ方式は、自律的プロ人材には受け入れられやすい。掲げられた「ビジョン、ミッション、好き嫌い」が自分のキャリアにピッタリと思う人が集まってくるからだ。しかし、キャリアの追及の仕方は人によりいろいろにならざるを得ない。ゆっくり目標を目指す人もいれば、いそいで目標に到達しようとする人もいる。人生のある時期誰もが直面する、出産や子育て、両親の介護といった事柄に対応するときは、少しキャリア追及の速度を下げる必要も出てくる。
猛烈に忙しい仕事に3年間従事したら、その後の1年は考える時間の十分ある仕事に就くなどのチェンジ・オブ・ペースも出来なければ、キャリア追求という長期レースを走りぬくことは難しい。
従って、この指とまれ方式は、キャリア追求の仕方の多様性を受け入れることが成立条件の一つになる。例えて言えば、高速車線を離れて低速車線を走行、一定期間終了後に再び高速車線に戻るような仕組みが必要である。
 

一国複数制度

 ビジョン、ミッション、好き嫌いを明らかにすることにより人材を特定する方式は、中国の一国二制度ではないが、一つの会社に複数の処遇制度があることを求める。自律的プロ人材の質と量を争う時代は、実は「柔軟な処遇制度を争う時代」と読み替えることもできるのである。
 
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