一人前の専門家として仕事を続けて行くとそのうち、自分の好きな特定の技術や知識分野を専門とする人と、マネージするものが変化や企業文化である専門家に分かれる。
従来議論された専門職議論は、ゼネラリストとスペシャリストの議論だが、この議論が成り立ったのは、競争の仕方が単純で、どの企業も価格と品質で戦い、経済成長と多くの競争制限的規制のお陰で、戦略が不在でも生き残れた時代だからである。既にコラムVol.2からVol. 5の「概ねの方向を決める手がかり」で検討したように、ビジネスモデルで競争する時代には、グローバリゼーションという変化を考慮にいれつつ、誰に何を売るか、どうやって競争に勝つかを考えかつ実行しなければならず、強いリーダーシップが要求される。経営者はもはやゼネラリストではなく、マーケティングと戦略に詳しい「変化をマネージするスペシャリスト」であることが求められる。HRMの専門家、経理の専門家、営業や製造の専門家と同じように、「専門の教育と専門の訓練が必要な専門職」でなければ、ならないのだ。
特定の技術や知識分野の専門家と経営の専門家に別れるキャリア上の分岐点は、自分と他人のマネージだけでなく、そこにビジネスのマネージが加わってしばらくしたあたりと考えられる。それまでは両者のキャリアに大きな差はないが、この時期以降、経営の専門家を目指す向きは、新たな訓練と実践に直面することになる。別法人に出向したりするケースも多く、処遇制度もそれらに対応した特別なものにならざるをえず、再び複数路線が必要になる。