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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.17  処遇(4)給与か、インセンティブか、それともベネフィットか

何を交渉するか

 組合に入ると決めた人は、処遇水準や処遇制度の中身についての交渉は組合にまかせることになる。目標管理などで、個人の業績についての主張は出来るので、組合にまかせっきりではないが、交渉できる範囲は限られる。処遇に不満であれば、他に職をもとめる他ない。

自律的プロ人材(組織内一人親方)として、個人で雇用者と交渉するのが本筋と決めた人は、労働契約の中身を交渉することになるが、処遇条件の全てを交渉するのでは、手数がかかるので、何を交渉するかを、ある程度決めておく必要がある。契約期間、仕事の内容は当然のことだが、処遇の内、給与、インセンティブ、フリンジ・ベネフィットのうちどこを中心にして交渉するかである。
 

年棒

 自分の腕に自信があり、「自分の評価の現われが年棒である」と考える人は、年棒を交渉の対象とする。この場合は、年棒を給与と賞与にどう配分するかも議論しなければならない。賞与は業績リンクなので、増える場合も減る場合もあるの。年収における比率をどの程度にするかは各人の選択だが、21C型HRMでは、組織は自律分散型ネットワークが主流なると思われる。(この点については、別途、項を改めて議論する。)

そこでは、「個人の能力を合計した以上の成果が求められる」ため、チームワークが重視されるので、賞与の評価様式は、会社の業績で 1/3 、チームの業績で 1/3、 個人の業績で 1/3、 といった形が普通になる。賞与に、個人の業績リンク度が高い計算式は採用しにくいのだ。よって、賞与の比率は20%か30%程度が限度と考えられる。
 成果配分はストック・オプションや長期インセンティブ・プランなどのインセンティブに求めることになるが、誰にインセンティブを与えるかは会社が決めることであり、通常、入社の時にしか交渉対象とはならない。しかし、これは今後、変化していくと思われる。
 

年棒はマーケット・プライスでOK,成果は仕事とインセンティブで

 ビジネス・モデルで競争する時代のHRMは、どちらかといえば最善型で、正解多数説が主流になると考える。(コラム4及びコラム5参照)理由は、高台に登って見えたことにより進むべき方向を決める戦略discovery based strategy あるいは emergent strategy が採用されるケースが多いので、発見したことに柔軟に対応することが求められるからである。高台に登ってみて分かった、競争相手との位置関係や進むべき方向で make or buy を決定するのが普通になる。
勝っていて時間が十分にある場合は、技術も人も自分で育てる(Make)。 負けていて、競争相手に追いつかなければならない場合は、技術も人も外部から買ってくる (Buy) 。会社が育てる文化は、「変化を当然のことと考える文化」である。この戦略が採用される場合、HRMに求められるのは、進むべき方向の変更に迅速に対応することで、人材などの内部リソースの組み換えが、素早くできなければならない。
 一方、個人が自分で働く場所を選ぶ傾向は、今後一層強まると考えられる(コラム3参照)ので、労働力の流動性は高くなる。雇用する側、雇用される側ともに流動性を頭において労働契約を交渉することになる。そうなると、年棒の決め方は、マーケットプライスによるものが中心となる。雇う方は、市場水準を越える給与は払いにくいし、雇われる方も、市場水準を越える給与をもらってしまうと、次の仕事が見つけにくくなってしまうからである。

 仕事については細かく注文をつけるが、給与はやかましいことをいわず、市場並でOK,業績対応は給与ではなく、インセンティブでお願いしたい、というのが標準となろう。一人親方にとって大切なのは、給与ではなく、業績を反映したインセンティブと、腕を鍛えてくれる仕事、キャリアを高めるのに役立つ業務経験である。よって、処遇にかんする交渉の中心は、インセンティブとベネフィットになる。そこで、次回は、インセンティブの内容とフリンジ・ベネフィットの内容について考えてみよう。

 
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