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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.32  人材開発(11) 専門性の開発の土台は、自分らしさと自律性

自分らしさを育てるには、人と交わらなければならない

 キャリアを考えるためには、自分が好きなこと、得意なことを知らなければならないとVol.26「キャリア追求の機会の提供」で書いたが、好きなことや得意なことは意外と自覚しにくい。「得意なこと」には、「他人に比べて」や「自分がするほかの事とくらべて」という意味が含まれている。得意かどうかは、比べてみなければわからないのだ。好き嫌いも「他のものと比べて」であろう。比べるから分かるという意味で、自分らしさを知ることの第一歩は、人と自分はどこが違っているかを知ることである。

 人との違いを知るためには、人と交わる必要がある。幼稚園や小学校の教育が大事なのは、そこで初めて人と自分の違いを知るからである。比べてみるということは水準を判定することで、自分では得意と思っていたことも、その水準が大抵の人より劣っていては、得意と言うことはできない。
ある学科が好きで得意だと思っても、比較する対象が中学校、高校と広くなるにつれて、もっと良くできる人が現れるので、得意とはいえない場合が増えてくる。

別な言葉でいえば、「得意というのにふさわしい水準」が上がってくるのだ。それでも、より高くなった水準をめざしてがんばれるのであれば、その学科が好きな可能性が高い。この場合、競争に勝つことが好きというケースや、計画を立てて実行することが好き、というケースも紛れ込んでくるので、その学科が、本当に好きかどうかが分かるためにはもう少し時間が必要である。

人と比べなくても、自分を詳しく観察することにより、自分らしさを理解することはできる。しかしそれは、人間に対する理解一般が高まったのち可能になることなので、初めのうちは、人と交わる機会を増やすことが大切である。

 

自律性を育てるには、自分の意見を持たなければならない

  自律性を育てるためにも、人と交わらなければならない。交わって「何かを、一緒に決める経験」をする必要がある。自分と違う意見に出会って、さてどうするかを決める経験である。自分の意見に従ってもらうか、自分の意見を変えるか、あるいは、自分の意見に従って行動するため、グループから離脱するか選択しなければならない。
自律性を育てる前提は、自分の意見を持つことである。その上で、意見に賛成してもらうよう、働き掛けたり、共鳴してもらったりする力を養う必要がある。意見の対立を調整する能力も必要になる。自分自身を理解する能力が高まれば、自律性を確保することは、少しずつ容易になる。得意な分野でなら、自分の意見に賛成してもらえるよう説得するのは難しくないし、対立する意見の調整もしやすい。従って、自律性を発揮する場所を選択するようになるのだが、それは、自分に対する理解が深まってからのことである。初めのうちは、まず自分の意見を持つことに努力すべきである。
 

仮説を立てる能力が、専門性を育てる

 キャリアを考える場合、自分は何の分野の専門家で、その専門のレベルは、現在はどの程度で、将来はどのくらいのレベルを目指すのかを知る必要がある。例えばHRマネジメントの世界でも、これまで述べてきたような、人材の特定 talent identification という分野に強い専門家もいれば、処遇(給与やフリンジ・ベネフィット)に強い専門家もいる。自分の専門性を選ばなければならないし、目指す目標レベルも、会社でトップレベルとか業界で一目置かれる存在とか、日本を代表できるとか決めなければならない。

だが、専門家の階段を上がるためには、仮説を立てて検証する能力を育てる必要がある。通説や教科書に書いてあることだけを頼りにしていては、世の中の変化に追いついていくことはできないからだ。
自分の切り口や見方が大切で、そのためには自律性を大いに発揮しなければならない。一方で、専門分野での知見を高めるには観察しつづけたり、考えつづけたりすることが必要になる。そのためには、自分が好きなこと、自分らしいやり方ができるテーマを選ぶ必要がある。自分らしさの理解が大切である。専門性を育てるための両輪は、自律性と自分らしさなのだ。

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