一皮むける経験をするためには、困難な状況に直面する必要がある。例えば泳ぎを教えるためには、海に放り込んでしまうのが一番よいのだが、それではあまりに乱暴すぎる。心臓麻痺を起こしたり、脚がつってしまったりしかねない。やはり準備体操や事前の練習が必要である。同様に、人を選抜し困難な仕事に配置するには、「その準備作業としての研修」が必要になる。それが、選抜研修制度である。
先のキャリア開発上の分岐点に照らせば、レベル2に進む前に自分と他人のマネージの仕方を教え、レベル3に進む以前に、自分と他人及びビジネスのマネージの仕方を教えるというカリキュラムになることは理解できよう。自分をマネージするという課題も、自分だけをマネージすればよいときと、他人をマネージする仕事についたときでは、内容は、自然、異なってくる。後者の場合であれば、自分の感情をよりコントロールしなければならない。感情にまかせて部下を叱り飛ばしていては、良い結果は生まれない。仕事の結果が不満であっても、相手の状況を見ながら指導しなければならない。
又、グローバル企業であれば、他人のなかには外国人も含まれてくるので、異文化コミュニケーション能力も必要になる。自分とは違う価値観を持つ人と一緒に仕事をするには、語学力だけでなく、例えば相手の文化を尊重し嫌がられる行為をしないなど、一つ上の自己管理能力が求められる。準備体操の内容も、選抜される人のレベルと経験させようとする仕事の難しさのレベルに応じて設計されなければならない。