ホーム  
3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.40  グローバルな競争と人材開発(4)海外事業の発展段階と人材 II

フェーズ3

 各地に海外子会社が増えたことにより、XXアメリカ、XXアジアなどの名称で、地域別に本社機能(財務、人事、広報、法務などの専門スタッフを置き、地域に対し会社を代表する役割をつとめたり、子会社の活動を支援したりする機能)を持つ会社が必要になる段階。

組織的には、海外では地域本社の下に事業子会社がおかれるが、複数事業部の製品を製造する子会社や近隣国に製品を輸出する会社も生まれてくる。現地での部品調達が本格化し、日本向けや、他の海外工場向けの部品の調達もはじまる。国内では、海外販売戦略を担当する部門が営業または事業部に置かれる。海外活動を専門的に支援する職能別スタッフ(例、国際人事課長など)が本社にそろいはじめる。

 海外進出の理由も、海外のリソース(市場の嗜好に合ったデザインをする能力、弁護士などの法律関係の知識など)を活用するため「市場に近いところで生産する」にウエイトが移ってくる。

このフェーズになると起こってくる特徴的な問題は、製品のライフサイクルが終わり撤退や製品転換を迫られる子会社が出てくることや、非日本人の間(例えばドイツ人とアメリカ人の間)のコミュニケーション問題などである。また、国内外の価格設定のありかたによっては、利益操作がおこなわれたのではないか疑われ課税されるケース(トランスファー・プライス問題)もでてくる。

国内では、海外に工場が移転したことによって生産量が縮小したことにより、工場の整理・統合が必要になってくる。また、製品や部品の輸出金額が減少するので国内の売り上げ額が少なくなり、研究開発費や事業部門のコストを回収することが難しくなってくる。通常は海外子会社が、特許使用料やブランド料のかたちで上記費用の一部を負担するが、立ち上げ期にあるものは多くを期待できないため問題が発生する。

 

フェーズ4

 ビジネス・モデルや自分の特徴点に基づき、「どこで何をするかを選択した結果できあがった海外事業」に至った段階。日本も地域本社の一つとして扱われるようになり日本企業であっても、本社機能が日本に置かれるとは限らない。産業構造の変化により海外子会社の数が減少し、地域本社のコストを負担できないため、地域本社を縮小したり廃止したりするケースもうまれてくる。地域ごとのニーズにあった製品開発が主流となり、設計部門の機能は海外に移転し、日本の工場はプロトタイプの試作や技術開発をおこなう開発センター化する。

 問題点は、事業部門ごとに海外事業の発展段階がいろいろ(先発事業は撤退局面、後発事業は進出局面)なので、フェーズ1から4までの全てが発生する。現在では、家電や半導体、コンピューターといった分野の日本企業の海外生産子会社数は減少あるいは中国などの特定地域に集中していて、人材育成の場が縮小している。特に問題なのは海外経験のあるベテランが定年退職し、その経験が失われ始めたこと。
 

フェーズ5

 統一したルールで運営する内外無差別なグローバル企業。理念型で、実際にはまれにしか存在しない。文化や制度の国境は低くなっても抜きがたく存在し、制度の統一的運用は問題が多い、M&Aの結果として、複数制度を維持せざるをえない状況がつづく、会社の寿命30年で、このレベルに到達する前に産業構造が変わり、事業を中止せざるをえない等がその理由である。

歴史的には、上記のフェーズを順番に経験するかたちで日本の海外事業は発展してきた。しかし現在はフェーズを飛ばして事業に取り組まざるをえないケースも増えてきている。学校でいえば2年生をやらずに1年生から3年生に進級する飛び級である。一方で、進級しないというオペレーションのしかたもある。次回はこういった問題を考えてみよう。

 

前のコラムへ バックナンバー一覧 次のコラムへ

「21世紀型人材マネジメント―組織内一人親方に好ましい生態系の創り方―」をテーマに、これからも関島康雄のコラムを掲載していきますのでご期待ください。また、このコラムに関するご意見・ご感想もお待ちしております。
※ご意見・ご感想はメールにてお寄せください。メールアドレスは連絡先のページを参照願います。

Copyright since 2006  3DLearningAssociates All Rights Reserved.