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21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.43  グローバルな競争と人材開発(7) 自動車産業の発展段階

「日本への輸出が普通になったか」がフェーズ判断のポイント

  日本経済全体の海外事業の発展段階は、現地生産が進み日本への持ち帰りや進出先の周辺国への輸出が本格化するフェーズ3にあると判断するが、日本経済に大きな影響を与える自動車産業の場合は、どのあたりに位置するのであろうか。

  4月27日の日経新聞によれば、乗用車8社の2009年度の活動は合計で、輸出は26.3%減少(139万台減)、国内生産は10.3%減少(98万台減)、海外生産は9.1%増(83万台増)となっている。海外生産が増えた分、輸出と国内生産(部品やノックダウン分があるので輸出減が丸まる反映はしない)が減少したことは明らかである。

しかし、日本への逆輸出が盛んになった、持ち帰りが進んだ、などというニュースはあまり多くない。「日産が4代目の「マーチ」を全量タイで生産し、日本でも販売」という記事が7月25日の日経新聞に出た程度である。
フェーズ2(後期)の特徴点は、海外生産は本格化したが、汎用品の生産は海外、高級品の生産は日本という区分けが色濃く残っていることである。フェーズ3になり、さらに汎用品の生産が拡大すると日本への持ち帰りという現象が発生し、ますます国内生産は減少することになるが、高級品は日本で生産する形態は残る。この特徴点から判断すると日本の自動車産業はフェーズ2(後期)にあるといえる。
 

地域本社機能は充実しているか

  フェーズ3の特徴点は地域本社の活動が本格化することだが、アメリカトヨタとか米国日産という名前もニュースには良く登場するので地域本社機能はある程度存在すると考えられる。地域本社の活動が本格化するには、日本の本社の機能と地域本社の機能の切り分けが進み、地域の事業活動に重大な影響のある事象については、地域側に権限の委譲がおこなわれる必要がある。しかし、リコールに関する権限が現地側になかったという報道が正しいとすると、権限の委譲についての議論は煮詰まっていなかった(現地側もそれは本社任せでも問題はないと考えていた?)と思われるので、この点からもフェーズ3には至っていないと考えることができる。

 

起こる問題から判断すると

  現場でどのような問題が起こっているか、もフェーズ判断の手がかりになる。フェーズ2(後期)におこる問題は、中小企業が中堅企業に脱皮する際ぶつかるような問題である。具体的には、育てた人材の退職や労働組合問題など処遇にかかわる問題と、事業活動が大きくなったことにより、関係する法律がふえたことによりおこる問題である。海外事業の場合は、優れた現地人材を確保するための施策や日本人と現地人の処遇格差の問題など雇用に関する問題と、安全衛生や独占禁止法、関税などの事業運営上関係する法規にかかわる問題がこれに相当する。会社が大きくなったため、海外勤務経験者の数が多くない管理部門の人や、海外経験がない役員クラスも海外勤務を要請される。

そのため、現地の事情に不案内なまま行動し、問題をおこす人がでてくるのがこのフェーズの特徴である。米国の場合でいえば、セクシャルハラスメントや賃金格差に関する訴訟がこの時期増加する。新聞報道によればトヨタも、育てた役員クラスの人材が競争相手に移ってしまったり、セクハラ問題がおこったり、リコール問題など安全に関する問題が発生したりしているので、起こった問題からみると、フェーズ2(後期)の特徴によく合致している。
 

発展段階は、フェーズ2(後期)

  以上を総合すると、日本全体の海外事業の発展段階は、持ち帰りが普通のこと(年間10兆3000億)になり、国内に大きな影響を与えているので、フェーズ3に位置すると考えられるのに対し、自動車産業はフェーズ2(後期)に位置すると判断できる。日本全体よりは、少し遅れているということになる。
細かい情報を持たない門外漢の、新聞情報だけによる判断なので、この判断が正しいかどうかはわからない。しかし、発展段階が、ある程度位置づけられれば、今後、起こりそうな問題が予測できるので、今後の人材開発を考える上では有用である。次回は、日本全体を対象に、どのような人材開発上の問題があるかについて考えてみよう。

 

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