ホーム  
3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.49  グローバルな競争と人材開発(13)
フェーズ3の課題 II 外部人材の活用

高度の専門性プラス企業の運営に関するコモンセンス

  地域本社で必要な人材は、中堅企業に必要な人材とは本質的に異なる。要求されるものの第一は、高い専門性である。例えばヨーロッパ中の子会社の人事マネージャーを集めて会議を主催する場面を想像してもらえばよい。決定権限の有り無しではなく、まず専門家としてメンバーに認められることが必要である。
次に必要なのが親会社とのコミュニケーション能力である。地域の代表として物申し、必要な支援を引き出すことが出来るようでないと代表とは認められない。親会社の意見を伝達するだけの人は、嫌われ、リーダーシップを発揮できない。反対に、現地の問題は私が最もよく知っているのだから任せておけばいいのだ、と親会社とのコミュニケーションを軽視する人も機能しない。

  三番目に必要なのは、企業の運営の仕方についての常識である。世界中でビジネスをする以上、方法はいろいろあるとしても、予算管理や意思決定のプロセスで「当然このような仕掛けは、なくてはならない」といった常識がないと仕事がぎくしゃくする。大企業ならどの会社もやっているようなプロセスであっても、「日本企業だからこんな面倒なことをしている」とか、「日本側でなんでも決定する」とかいう誤解を生んでしまうからだ。(これを私は、because Japanese company syndrome と呼んでいる。中小企業時代に採用された人や、技術者のなかには、このような企業の運営に関する常識が不足する人もいるので、グローバル化プログラム レベル2でカバーする必要がある)例えば、前回のコラムvol.48で触れた、費用負担についての考え方である。
地域本社の費用は
1)地域本社が持つ事業部門に割りかけとして配布され、ビジネスを通して地域本社内で回収される
2)親会社から委託された業務をおこなう対価として親会社に請求する
3)現地子会社に対しサービスを提供する場合は、一件ごとに費用を請求する
などいろいろあり、これらの組み合わせにより地域本社は運営されているのが普通である。
こういう事情を理解せずに、「地域本社として指導する」という態度で仕事をおこなえば、自律的に行動したいと思っている現地子会社や事業部門の反発を招いてしまう。「地域本社が介入しすぎる」、「サービスにくらべ費用が高すぎる」、といった感情が存在するからだ。地域本社の人材には、「複数の子会社あるいは多くの事業部門を持つ会社で働いた経験」が求められる理由である。

 

キャリアのうえで誇れるテーマが必要

  外部人材の活用のためには、高度専門職の採用が可能な処遇制度を整備する必要がある。当然、給与その他、従来からいる人とのバランスが問題になる。ストック・オプションやLong Term Incentive Plan といったものが必要になる。しかし、なによりも大切なのは、面白い仕事のテーマである。親会社の方針を理解したうえで地域戦略の立案と実行に専門知識を振るってもらうのが外部から人を採用するねらいである以上、これは面白そうだと感じられるテーマ が用意されなければならない。

ところが、意外とこの点に対する配慮が採用する側に不足するケースが多い。テーマを丸投げしてしまったり、当面の課題のみの解決でよしとしたりで、本人のキャリアの上で誇れるようなテーマを大、中、小そろえるという視点が欠けるのだ。これは、日本企業に、個人のキャリア目標と組織の目標の同時追求という考え方が十分に定着していないことに原因がある。しかし、この用意がないと良い人は採用できないし、採用しても簡単に転職されてしまったりする。
 

グローバルな視点

  テーマは、長期の目標から考え地域本社にやって欲しいことの中から選ぶのだが、グローバルな文脈のなかでの位置付けも明確にする必要がある。例えば、HRに関する本社とアメリカ本社の責任権限の明確化というテーマだとして、その結論は、今後他の地域にも適応されるとか、他の職能分野にもその考え方は応用されるとか決めておくと現地子会社からの検討メンバーも結論を自社に持ち帰りやすい。グローバルな教育プログラムの開発だが、新任マネージャー向けは欧州本社に主査を、新入社員のオリエンテーションプログラムはアジア本社中心にまとめる、といった方式でも良い。

  地域本社の役割はその地域にあったビジネスの仕方を考えることであり、一社最適、一国最適という考え方から地域最適に現地法人の考え方を変えることである。しかしその上には、グローバルなオペレーションをどうするかという考え方がある。グローバルな視点も地域本社に育てなければならない。

  次回は、地域本社が出来たりするとにわかに顕在化する外・外コミュニケーションの問題をとりあげてみよう。

 
 

前のコラムへ バックナンバー一覧 次のコラムへ

「21世紀型人材マネジメント―組織内一人親方に好ましい生態系の創り方―」をテーマに、これからも関島康雄のコラムを掲載していきますのでご期待ください。また、このコラムに関するご意見・ご感想もお待ちしております。
※ご意見・ご感想はメールにてお寄せください。メールアドレスは連絡先のページを参照願います。

Copyright since 2006  3DLearningAssociates All Rights Reserved.