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21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.52  グローバルな競争と人材開発(16)グローバル化プログラム レベル2

ローカルビジョンの徹底

  フェーズ2後期に導入される「グローバル化プログラム レベル1」で、グローバル企業としての会社のビジョンを浸透させたとしても、それだけでは十分とはいえない。フェーズ3ともなれば地域本社に各職能分野の専門家が増えるだけでなく、地域本社が統轄する子会社の数も増えてくるため、より身近な行動指針が必要になってくる。

  そもそもビジョンとは、遠くの丘の上の旗である。それぞれの部隊は、その旗を目指して進む。森に入って方向が分からなくなったときは、木に登って旗がある方向を確かめなければならない。活動の分野が広がり、組織が大きくなった場合、組織の動き方を決めるルールを細かく作ることは手数もかかり効率的ではない。それよりは、この方向に進むのだということを明確にし、あとはそれぞれの部門が自主的にルールを定める方が活動しやすい。

それゆえこの段階になれば、会社のビジョン実現のために、例えば、「人事部門はどのような考え方で仕事をするのか」を改めて問われることになる。会社のビジョンをより具体化した「グローバルな職能部門としてのビジョン」や「複数の国を管轄する地域本社としてのビジョン」が必要になるの。これらのビジョンを会社のビジョンの下位のビジョンという意味でローカルビジョンと呼ぶとすると、グローバル化プログラム レベル2(以下レベル2と呼ぶ)の目標の第一は、ローカルビジョンの徹底である。

なお、ローカルビジョンを作る際留意しなければいけないことは、海外事業に携わる人だけを対象に考えるのではなく、海外事業に関係の薄い人や労働組合なども対象として考慮に入れなければいけないということだ。グローバル化はフェーズ3になれば、特別なことではなく普通のことになり、海外転勤は誰にでも起こりうることになったからである。

 

全社統一ルールと裁量に任せることの区分を理解させる

  職能別のビジョンや地域本社のビジョンを作る際、どうしても考慮にいれなければいけないことは、地域は異なっても世界共通に守らなければいけないことと、地域ごとの裁量に任せることの区分である。地域本社は、国は異なっても地域共通に守らなければいけないことと、国ごとの裁量に任せることの区分をする必要がある。

これらの区分設定には、当然のことながら多くの議論をともなう。場合によっては、古くからある子会社の既得権益の整理も必要になる。それゆえ、議論の後に、統一ルールと決められた理由、および結論に至るまでの経過などを、同じ議論が繰り返されないよう整理しておかなければならない。

その上で、これらの資料をグローバル化教育プログラム レベル2の教材として有効活用すべきである。プログラムの参加者に、自分たちであればどのような区分としたであろうかを討議させ、現在のルールが決まるに至った経緯との比較を行うなどは、その使い方の一例である。共通に守らなければいけない部分と自由裁量に任される部分を明確に理解させることにより、組織間の軋轢を少なくするのがレベル2プログラムの二番目の目標である。

 

外・外コミュニケーションの改善

  レベル2プログラムの第三の目標は、外・外コミュニケーションの改善である。全世界各地からの参加者によるグループ討議をツールとして活用し、異文化コミュニケーション能力の向上をめざすことが狙いである。特に英語を母国語とする人は、英語が共通言語になる場合が多いので言葉のハードルが低く、そのため自分のコミュニケーション能力が不足していても、その認識が薄いことがしばしばである。
この点を理解させるためにはチームを作って戦うメネジメントゲームが有効である。ポイントは、討議の観察者の活用にある。チームの意思決定に際し、英語を母国語とする人が言葉で議論を支配したケースを取り上げ、他のメンバーがどのように感じたかや、良い意見が述べられたのにもかかわらず結論に反映されなかった理由を考えさせるのがよい。
 
 

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