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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.56  組織(2)組織は競争優位性の源泉

横に切っても縦に切っても羊羹は羊羹

  組織の長になると、やたらと組織を変更したがる人がいる。組織の意味について十分に理解していないことが原因である。組織は、組織図で示されるような構造だけでできているのではなく、業務のプロセスや通常におこなわれる意思決定(ルティーン)、組織の持つ文化からも成り立っている。
それ故、構造を変えても、仕事の仕方や組織の文化を変更しなければ、大した変化は起こらない。横に切っても縦に切っても、羊羹は羊羹なのだ。

  組織を変えようと考える背景には何か不都合、不便だと思うことがあるはずだが、問題解決のためには、まず仕事の仕方とか組織文化を変えることにチャレンジすべきである。仕事の仕方や文化が変れば、それにあった組織構造が次第に明らかになってくる。組織を変更するのはそれからで良い。

  ビジネスモデルに適合した組織を作るためには、組織の意味(役割や個人と組織の関係、グループ間のつながり、組織を設計する際考慮しなければいけないポイントなど)について十分理解する必要がある。組織に関する原理・原則が分かっていないと、羊羹を横に切ったり縦に切ったりして自己満足する事態になりかねない。
 

組織の基本原理は分業

  組織の役割は、組織を営業だとか製造だとか経理だとかグループ分けすることにより、「分業の度合い」をコントロールすることにある。分業とは、一人の人が全部の仕事を実行するのではなく、仕事を分割し担当を専門化することにより、効率をあげる仕掛けである。どの範囲の仕事を一つのグループと区分けするかによって分業の程度が決まり、効率のレベルも決まってくる。区分けされたグループは、その活動に必要な資源(人や資金、設備や知識)を入手し、それらを効率的に活用することにより、ビジネスモデルの実現をめざす。

  「分業することにより効率を上げる」といったが、それには二通りの意味がある。一つは専門性を生かすことにより効率をあげるという考え方、もう一つは責任をはっきりさせることにより効率向上に役立てるというものだ。

後者を更に進めると収支責任という考え方に発展する。製品別のグループ分けとか地域別のグループ分けがそれに相当するが、それは組織そのものが非常に大きくなった場合にとられる効率向上対策(事業部組織と呼ばれる)である。ここでは、組織の役割をその原理原則から考えようとしているので、分業の一番の元である「区分によって生まれる専門化」によって生まれる職能的な区分(機能別組織)を中心に話を進めたい。

組織が重要なのは、このグループわけが上手かそうでないかにより、競争に勝てるかどうかが左右されることだ。そのため、組織は競争優位性の源泉と考えられ、組織の作り方について多くの議論が生まれてきた。

 

組織が抱える基本的な問題

  分業が上手く機能するために必要な課題は二つある。一つは、区分されたそれぞれのグループが、ビジネスモデルを実現するために行動できるかどうか、である。官僚組織のように省益あって国益なしといわれるようでは問題で、企業の目標とグループの目標とは、同じ方向を向いていなければならない。

このテーマを協働コーディネーション問題という。もう一つは、企業と違った目標を持つ可能性が高い個人に働きかけ、企業の目標に沿った行動をしてもらうにはどうしたらよいかという課題である。このテーマを奨励策インセンティブ問題という。

  上記の問題をより理解してもらうために、別な形で説明すると次のようになる。
組織を区分するのは専門化することにより、仕事を効率よくするためである。ビジネスモデルが汎用品を不特定多数の消費者に販売するという場合、製造部門はコスト削減に努力しているのに設計部門は高級な機能ばかり追求するというのでは目標が共有化されていない。

  設計や製造といった部門がそれぞれ仕事に必要な材料や設備を購入していたのでは仕事に専念できない。専門部署を作ってそこに任せようということで、資材部門を作ったとしよう。便利になるよう作ったのだから利用してもらわないと困る。検査部門は自分で買うという制度を残したのでは効率を高めることはできない。

組織はある意味で高速道路のようなものなのだ。便利なように作ったのだが一般道路との接続が不便では利用されない。料金が便利さにくらべ高すぎても利用されないのだ。

次は、この二つの基本問題にどのように取り組むかを、組織設計の視点から考えてみたい。

 
 

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