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21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.57  組織(3)組織設計上の留意点 I 分けると起こること

組織改革が上手くいかないのは、人事部門の勉強不足も一因

  「組織内一人親方が気持ちよく働ける組織を作るには、どうしたらよいか」というテーマを考えるためには、「グループを分けると、どんなことが起こるか」ということを十分理解しておく必要がある。

  多くの企業で組織改革が失敗する理由は、「変革を実行するためのプロセス」についての理解が不十分なためと一般には考えられているが、日本の場合は、経営トップや人事部門が勉強不足で、「グループ区分のロジック(分業の理屈)を、戦略理論の一部分として、整理された形で理解」していないことも原因の一つである。そこで、前回述べた二つの基本問題、協働(コーディネーション)と奨励策(インセンティブ)を念頭に、グループ分けが仕事の仕方にどのような影響を、基本に戻って整理しておこう。

 

グループは、「分ければ離れる、分ければ固まる」

   組織をグループ分けすることにより、二つの関係が発生する。一つは、横の繋がり。これは、区分することにより専門性を高め効率を上げようとすると、グループ間の連携が留意すべきポイントになる。
例えば、設計、製造、検査というグループの間で情報が上手く流れなければ良い製品は生まれない。
もう一つは縦の繋がりで、意志の決定プロセスに大いに関係する。部長、課長、主任といったポストにある人に、どのような権限を与えるかにより意思決定の速度は変ってくる。このことは、本社、事業部、工場という大きなグループにも、同様にあてはまる。本社、事業部、工場間の連携がスムーズでなければ仕事は円滑に進まない。

  どちらの関係であっても、情報や資源の共有化は、グループ間よりグループ内の方がやりやすい。さらには、組織の境界を超えて伝達されるにつれて情報は失われる。言われて見れば極当然のことなのだが、現実の世界では上記のポイントが十分吟味されないまま組織の改変がおこなわれるケースがしばしばである。そこで、グループ化することにより直ちにおこる特徴、「分ければ離れる」についてまず考えてみよう。

 

横の繋がりを円滑にするための対策

  グループ間の協働を確保するためには、情報の共有化が基本となる。このことを前提に人材マネジメントの施策をながめてみればいろいろなことに気が付く。タスクフォースやクロス・ファンクショナル・チームと呼ばれるような横断的組織は、情報だけでなく時に経営資源の配分に関する権限も与えられて特定の課題に取り組むので、最も強力な対策ということができる。

  穏やかな道具では人脈で、人脈を広げるための工夫、すなわち入社同期会から始まって、運動部、文化部の活動、研究発表会や委員会活動の奨励は、全てこの範疇にはいる。

  臨時の職制ではなく恒常的組織でいえば、例えば、「生産技術部は省エネ技術に関し各事業部門を支援し、コスト低減をはかる責任と権限を有する」と規定すれば、これも協働のための施策の一つとなる。

部門間の連携を円滑にするための責任者(連絡将校)を特定の人や係に置くというのも対策(リエイゾンと呼ぶ)の一つである。グループ間の関係がわるく喧嘩ばかりしているようであれば、喧嘩しているグループのトップを相互に入れ替えてしまうという非常策もある。部門間のローテーションも協働を促す施策といえる。

  グループ間の繋がりを円滑にするための促進策としては、グループ単位だけの業績評価ではなく、全社の業績も各人の評価に繋がる方式の導入、例えば、各人の賞与は全社の業績で1/3、部門の成績で1/3、各人の業績で1/3といった算式にする、はその一例である。一つの事業部に複数のブランド、例えばPCとプリンターの事業責任を与えるという対策もありえる。

  要は、組織を作る時には、分業のロジック、「分ければ離れる、分ければ固まる」について十分考慮し、派生する問題についての対策も考えておかなければならないということだ。次回は、分ければ離れるという現象が、縦の関係では、どのような形で現れるかについて考えてみる。

 

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