縦の繋がりを極端に簡素化したものが、いわゆる「フラットな組織」である。通常「フラットな組織」が志向される理由は、組織の階層を減らすことにより意思決定を速くしたいため、あるいは自由な討議ができる環境を確保することにより革新的な成果を得たいためである。しかし多くの場合、期待は裏切られる。
縦の分業を削減することにより縦の「分ければ離れる問題」は改善されるが、「分ければ固まる問題」であるwhat とhow の階層構造が失われるため、組織のメンバーがそれぞれ上位、下位の what と how を考えなければならず、戦略的な思考だけでなく実務的な実行プロセスについての知恵が求められるので、各人の業務上の負荷が大きくなる。そのためフラットな組織は、一定以上の能力を要する専門家で構成されなければ、機能しない。
一方、縦の分業が簡素化されたため、横の分業の特徴点が普通の組織の場合より強く働く。情報の共有化、別な表現をすれば、誰に情報を伝達すればよいかという問題が、大きくクローズアップされてくる。縦の階層がはっきりしていれば上司に報告すればそれですむ。上司が必要なところに情報を伝達してくれるのだが、上司が少なく同僚の多いフラットな組織では、誰に情報を伝えるかを各人が自分で考えなければならない。
「フラットな組織にすれば効率が良くなる」わけではないのだ。