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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.64  組織(10)組織と戦略 III 優位性活用型に好ましい人材マネジメント

より良いルートを見つけたい

  競争優位性の活用、探索といった区分と人材マネジメントの関係を把握するためには、活用、探索、それぞれの「事業に対するアプローチのしかたの違い」を理解しておく必要がある。

  「優位性の活用」を山登りに例えれば、現在登っている山の登り方は分かったが、もっと良い登山ルートはないか、また、良い登山ルートが見つかっている場合でも、もっと効率の良い登り方はないかと考えることと定義できる。これに対し新しい優位性を探索する場合は、もっと別な良い山はないか(もっと高い山、もっと登りやすい山、もっと遠くが見える山などビジネスモデルにより、良い山の定義は異なる)と探すこと、という定義になる。
(見つけた後、登り方は考える)それ故良いルートの発見につながるような行為が奨励される。例えば、頂上へのルートを出来るだけたくさん見つける方が、その中に最良のルートが入っている可能性は高くなるので、新しいルートの発見に力が注がれ、他の山に関する情報はそれほど重要視されない。
 

人材マネジメント上の特徴点

  優位性活用型の場合の人材マネジメント上の特徴点を以下に整理してみよう。

1.ビジョンにより逸脱行為をふせぐ

優位性活用型の場合、人材マネジメント上にそのことを反映させる必要がある。たとえば、会社のビジョン(どういう会社?という質問に対する答え)では、事業の領域ドメインを出来るだけ具体的に定義するほうがよい。例えば「医療分野に貢献」ではなく「高齢者医療に貢献」である。ビジョンの役割は「遠くの目標」として進むべき方向を指し示すものだが、一方で従業員の行為が、特定の領域から逸脱することを防ぐ役割を持つからだ。
戦略的なスタンスで言えば、特定の事業分野をさらに深く掘り下げることが主眼となるので、多角化は求められない。試みたとしても「リスク対策として一応この分野にも目を配っておこう」といった感じで、力投球ではない。

2.組織の相互依存性は高い

 この点については既に前回のコラムvol.63で説明した。

3.自由裁量度の範囲は枠内

組織の活動にたいしどの程度の自由度を認めるかという点では、組織の責任・権限の範囲内であれば自由に決定できるが、それを超えることは原則として禁じられる。外部環境の変化に対応して組織の役割や活動内容を変革しなければならない場合でも、現在の優位性を損なわない範囲で少しづつおこなうことになる。どの方向にかえるか、変更のプロセスはどうするかなどは中央集権的に決められ、個々の組織が自発的に取り組むことは奨励されない。

4.学習したことを素早く伝達する文化

組織学習という視点で見れば、一部門が学んだことが直ぐに他の部門でも活用されることが望ましい。その意味で情報の共有化、円滑なコミュニケーションといったテーマに人材マネジメントは努力することが求められる。コラムvol.57で述べたような、組織の壁をこえて横のつながりを円滑にする施策はすべて歓迎される。
 

いつか必要になる競争優位性の探索

  優位性の活用型の場合、「全社が一体となって」といったタイプの活動が好ましい。しかし、グローバルな競争が主流な時代には、競争優位性は長続きしない。従って、現在優位な立場にある企業も、いつか優位性の探索が必要な時がくる。次回は探索型に必要な人材マネジメントについて考えてみよう。

 

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「21世紀型人材マネジメント―組織内一人親方に好ましい生態系の創り方―」をテーマに、これからも関島康雄のコラムを掲載していきますのでご期待ください。また、このコラムに関するご意見・ご感想もお待ちしております。
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