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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.65  組織(11)組織と戦略 IIII 探索型に好ましい人材マネジメント

良い山を見つけたい

  新たな競争相手の出現や外部環境の変化により競争優位性が失われた場合(あるいは失うことがことが予想される場合)、新しい優位性を見つけなければならない。山の例えでいえば、現在登っている山とは別な良い山を見つけなければならない。良い山とは、現在自分が持っている装備や技術、体力から判断し登りやすくなければならないが、自分の好み(景色が良いのが好きとか高い山で登るのに技術を要するような山が好きなど人によって異なる)からいっても良い山でなければならない。

  良い山を見つけるには、できるだけ多くの山についての情報を集めるのがよい。情報が多ければその中に良い山が含まれる可能性が高くなるからだ。その上で比較検討し登る山を決めることになるが、決めたら誰かに試に登ってもらい、さらに詳しい情報を競争相手より先に入手し評価するという手順が必要になる。

 

ビジョンの役割

  良い山をみつけるといっても、いきあたりばったり探すのでは、見つかるものも見つからない。何らかの手掛かりが必要である。その手掛かりを提供するのが遠くの旗、ビジョンである。活用型の場合ビジョンの役割は、進むべき方向を示すことにより、従業員の活動が特定の事業領域から逸脱することを防ぐことにあった。しかし探索型の場合は、探す場所のヒントを示す働きをしなければならない。

「画像処理の技術で社会に貢献」というビジョントと「ドキュメントといわれるもの全てを対象に業務の効率化を手助けする」というビジョンでは同じようで違う。しかし、どちらも事業領域を明示しているだけでなく、新しい競争優位性を探索する場合の手掛かりは提供している。ビジョンの作り方の上手下手が、組織の競争力に影響する理由がここにある。

 

探索型に適した人材マネジメント

  探索型に適した人材マネジメントの特徴をどのような組織にするかという視点から考えてみよう。

A(architecture):組織構造は相互依存性が低く、どちらかというとそれぞれの組織が独立的に動くことが可能なように職務を割り当てる。例えば、設計部門でいえば開発部は次次代製品担当、設計部は次世代製品と現流品およびそのバージョンアップ担当といった区分とする。製造部門もこれに対応して、製造部には製品別の製作課とは別に試作課を設ける。場合によっては試作課を開発部所属としてもよい。この場合、次世代製品の試作や源流品の改良は製造部の仕事となる。

R(routine):探索型のルーティンが確立されている。例えば、新しい工夫やアイデアを評価するプロセスが定着していて、何を採用し何を採用しないか、どのような点に注意すると新しいアイデアの実行可能性が高まるか等を部門のトップが理解している。イノベーションをもたらした人に報いる仕掛け(特許に対する報償制度など)が出来ていて、制度の内容は常識となっているなどなど。

C(culture):リスクを取ることを奨励する風土があり、果敢なチャレンジをした人についての逸話がいろいろ残っている。ドラスティックな変化を怖がらないだけでなく、面白がる雰囲気がある。失敗は成功の母だと皆が思っている。
 

二兎を追うのが正しい

  前回のコラムで、「現代の競争では、競争優位性は長が続きしないので、現在優位な立場にある企業も、いつか優位性の探索が必要になる」と書いたが、これは「二兎を追うことができる企業が勝つ」というグローバル競争時代の競争優位性が持つ特徴を、別な形で表現したものと言える。

個人生活と社会生活、グローバルな価値観とローカルな価値観、株主と従業員、それぞれ時に相反する利害関係を有するが、両方とも満足するように行動するのが、勝つための方法という考え方である。活用型、探索型の両方に対応できる工夫が、21C型人材マネジメントの要点なのである。次回はこの点について考えてみよう。
 

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「21世紀型人材マネジメント―組織内一人親方に好ましい生態系の創り方―」をテーマに、これからも関島康雄のコラムを掲載していきますのでご期待ください。また、このコラムに関するご意見・ご感想もお待ちしております。
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