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21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.69  HRM戦略(1)HRM戦略とはなにか

歩き始めの三つの手掛りから何が見えたか

  21世紀型人材マネジメントという目標を目指して歩き出すにあたって、概ねの方向を決めるための手掛りとして、
1)競争の仕方
2)正しい答えは一つ(最良 best)か、それとも多数か(最善 better)、はたまた、基本と応用か
3)人材マネジメントの歴史
の三つについて考えた。(コラムvol.2「競争の仕方について」vol.8「簡単にマネされるものと、そうでないもの」を参照)
歩き出し時点での結論は、競争の仕方については「ビジネスモデルによる競争は続く」、正しい答えは一つか多数かについては、「判断を保留するが、HRMは均質化というよりは多様化の方向ではないか」、また、人材マネジメントの歴史をみると、時代ごとに企業業績に大きく影響する事象に貢献が求められてきたと判断できるので、今後は戦略を支援するHRMというよりは、「ビジネスモデルを支援するHRMが求められる」というものであった。

  そして、歩きながら考えた結果はそれぞれ、グローバル化という外部環境から、1)は、世界中に競争相手とサプライヤー(広義)がいるという条件化での競争になる。2)は複雑性の制御が求められるので、対応は基本(プラットフォーム)と応用(機能デバイス)という形をとる。3)ビジネスモデルを支援するHRMであるためには、時に相反する価値(例えば、個人生活と会社生活、従業員と株主、グローバルな価値観とローカルな価値観)の同時追求、すなわち二兎を追うことができなければならない、というものになった。
 

経営戦略とHRM戦略の関係

  上記の手掛りを参考に21世紀型人材マネジメントついて考えを進めるに当たり、もう一度、経営戦略とHRM戦略の関係を整理しておこう。戦略についての考え方の変化がHRM戦略の考え方に影響を与えるからである。
ビジネスモデルで闘う世界では、お客さんとお客さんに提供する価値、および競争の勝ち方についての選択が重要なのだが、既にある組織では現在手元にある有形無形のリソースをベースに上記を選択する場合が多い。(コラムvol.62「ビジネスモデルは組織に従う」参照)

経営戦略は、ビジネスモデルを成功させるという目標を達成するには、どのように闘えばよいかを考えたものだが、その際、リソースに不足するものがあれば補充し、余計なものは処分し身軽になる必要がある。人的資源に関しそのような機能を分担するのがHRMである。また、選んだビジネスモデルを実行するのに相応しい企業文化をつくるのもHRMの仕事である。簡単にいえば、HRMは競争の勝ち方から決まるだけでなく、お客さんとの関係からも決まってくるものである。

  事前に決まるタイプの戦略の場合、一から始めるので、人集めも、処遇制度の設計も、ビジネスモデルにふさわしい文化の構築も比較的自由に行うことができる。HRM戦略も立てやすい。しかし事後的に決まるタイプの戦略の場合は現状の変更を伴うので、HRM戦略も多くの制限を受ける。よって、経営戦略のタイプによってHRMの機能(あるいは部品)の活用の仕方に違いが出てくることに留意しなければならない。
 

HRM戦略という部品の山

  コラムvol.10「部品の山の再定義」で、ビジネスモデルを支援するためには、従来の採用、給与、教育、労務、福利厚生という職能区分ではなく、施策の束をつくるための部品という考え方が必要だとし、「人材の特定」という部品の山について、コラムvol.11「わが社は、こういう人が好き」vol.13「プロも見習いも、速い人もスローな人も」で説明した。しかし、部品の山そのものについては詳しく説明していない。今後の議論を分かりやすくするために、ここですこし整理しておきたい。

  部品の山は、
1)HRM戦略と組織
2)人材の特定talent identification
3)処遇
4)人材開発
5)労使関係と職場環境
の五つである。
このような区分になる理由は、「ビジネスモデルの実現能力」(コラムvol.55「組織はビジネスモデルに従う」参照)という視点にある。
ビジネスモデルを実行しようとすれば、まず1)コアとなる従業員を集め組織を作らなければならない。ビジネスモデルに適した企業文化も作る必要がある。2)は、人を選ぶ仕事。採用、プロジェクトメンバーの選定、サクセションプランやキャリア開発に関するものがそれである。3)は、人を集めるのに必要な道具で、給与、インセンティブ、ベネフィット、4)は人を内部から供給するために必要なこと教育訓練、評価、組織としての能力向上など、5)はその他、労働契約や苦情処理、安全衛生、私生活とのバランス問題などが含まれる。

  本コラムもこの区分に従い、2)人材の特定、3)処遇、4)人材開発、と話を進めてきた。1)の「HRM戦略と組織」が後になったのは、その理解に、そもそも経営戦略とは何か、組織とどう関係するかを知る必要があったためである。コラムvol.55「組織はビジネスモデルに従う」vol.68「緊急展開部隊が成立する条件」でこの課題に取り組んできたので、ビジネスモデルを支援するためのHRM戦略について考える条件がようやく整ったと思う。

  次回以降、三つの手掛りとHRM戦略の関係を順次考えることにしよう。
 

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