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21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.70  HRM戦略(2)手掛かり I 競争の仕方 再論

グローバルな世界での競争

  ビジネスモデル(お客さんとお客さんに提供する価値、競争の勝ち方とうセット)に貢献するHRMを作るためには、選択したビジネスモデルから考えてどのような従業員、組織、企業文化が必要かという視点から考えなければならないが、そのためには外部コンテキストである競争の仕方について、再論議論する必要がある。

  競争の仕方については、コラムvol.2「概ねの方向を決める手がかり(1)競争の仕方について」のほかに、グローバル競争という視点から垂直統合方式と水平展開型について触れた。(コラムvol.37「グローバルな競争と人材開発(1)グローバル化が人材開発に与える影響」)
しかし、世界中に(お客だけでなく)競争相手とサプライヤーがいるという状況に対応する競争の仕方については、くわしくは検討していない。グローバルな競争に直面した企業が解決しなければいけない問題を整理すると、二つのテーマにいきつく。複雑性の制御と即応性である。

 

複雑性の制御という課題

  「複雑性の制御」とは、商品で考えると、先進国の好みと新興国の好みは異なるがそれぞれに、どのように対応するかという課題である。先進国の間でも北米と欧州は異なるし、欧州でも英、仏、独は異なる。同様な現象はアジアの国々でも見られる。また商品には高級品、標準品、低価格品という区分があるのは当然なので、ターゲットを絞ったとしても、グローバルな市場で闘おうとすれば、商品の種類は複雑化せざるをえない。商品を絞って複数の市場に対応しようとしても、世界中に競争相手がいて、特定の市場にピッタリの製品を開発投入してくるので競争に勝つのは大変である。

それぞれの国の市場別に製品を開発すればよいのだが、それでは費用が掛かりすぎる。HRMの場合も、国ごとに異なる法律や労働慣行と労働市場に適応するという複雑性に対応しなければならない。「評価制度が公平であることはHRMの基本」という人はたくさんいるが、「国ごとの公平、フェアーの概念は、その国の文化により非常に異なる」という事実に直面すると、基本は一つではないということになり、対策が必要になる。

 

即応性

  もう一つのテーマの即応性とは、世界中で起こる多様な変化にどのように素早く対応するかである。お客の好みの変化に対応できず不良在庫を抱え込むリスクは、一国を相手にしている場合よりも、世界を相手にする方が何倍も大きい。日中間の例のように政治的な問題がビジネスに及ぼす影響というリスクや、タイの洪水のような自然災害リスクもある。なによりも技術変化や思わぬ競争相手の出現というリスクには注意しなければならない。

このような多くのリスクに対応するためには、全てを自分でおこなうのではなく他の人と仕事を分担することによってリスクを軽減したり、変化に対応して素早く経営資源を組み替えたりする必要がある。そのためには、「経営資源の効率的組み合わせ」を常に意識するだけでなく、変化に対応するための速度を重視することになる。
 

勝ち方の二類型、打率を上げるか、打数を上げるか

  複雑性、即応性という二つのテーマを追求しつつ勝つための方法は、いろいろ考えられるが、大きく分けると二通りになる。打率を上げるか、打席数を増やすかである。この場合、打席数はビジネス機会、安打は、正当な利益をあげることができる取引の成立である。

  打率を上げるとは、打席数に対する安打比率をあげることで、10打席2安打であれば打率は2割、これを3割に引き上げれば3安打になる。一方打率2割のままで3安打するためには15打席必要である。3安打という目標を達成する方法は二つあり、打率を上げる方法と、打率はそのままで打席数を増やす方法とがあるということだ。

少し具体的に説明すると、特定のお客さんとの関係を深め、お客さんのビジネスのビジネスモデルをよく知り、いろいろ相談されるような関係になることにより、商談を成立させる確率を高めるのが前者。この場合親密な関係になるために時間とエネルギーが必要なのでたくさんのお客さんを相手にはできないし、またその必要もない。特定のお客さんに密着することにより複雑性と即応性をコントロールしているといえよう。

打席数を増やすとは、商品の品揃えの範囲を広くすることにより、機会損失を少なくする方法、すなわち「そのタイプの商品は扱っていません」といって折角来たお客さんを逃がしてしまうようなことはしないという作戦である。複雑性と即応性に数で対応するという考え方である。

 

競争のポイント

  以上を纏めると、グローバル時代のビジネスモデルによる競争は、世界中にお客さんと競争相手、部品のサプライヤーがいるという条件の下、複雑性と即応性という二つのテーマに対応し、勝ち方を考えるという競争だということになる。

 

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