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21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.74  HRM戦略(6)手掛かりII プラットフォームと機能デバイス

「日本企業が日本企業である理由」では不十分

  プラットフォームをなににするかを考える際、基本となるのは「自己の特徴点は何か」である。グローバルな環境で闘うためには、自分は何をし、人には何を頼むかを決めなければならないが、自己の特徴点に対する認識が希薄ではこの決定は難しい。

  このコラムの始めの部分「概ねの方向を決める手がかり」の項で、80年代、日本企業が日本企業である理由はハッキリしていたが、個々の企業が「自分が自分である理由」はあまりハッキリしていなかった、と書いた。(コラムvol.4参照)日本企業が日本企業である理由とは、長期雇用、年功序列賃金、人材は社内で育てる、ブルーカラーにも賞与あり等の人材マネジメントの特徴のことである。「自分が自分である理由」とは、自己のビジネスモデルをどのように認識しているかという質問にどう答えるかである。

  90年代以降日本企業が苦戦を強いられるようになった理由が、競争の仕方がどの会社も、「価格と品質」で、ビジネスモデルではなかったことにある。

ビジネスモデルで競争するのであれば、お客、お客に提供する価値、競争の勝ち方のどれかで他との差別化が不可欠で、それが企業の特徴となり、企業ごとの違いがもっと明確になったと思われる。
むろん、日立と松下とソニーではビジネスモデルは異なってはいたが、大きな目で見ると、垂直統合型ものづくりで価格と品質重視という、共通点の方が大きかったといえよう。

 

プラットフォームにすべきものは変わりにくいもの

  プラットフォームは、各種製品のベースになるもののことである。このことに即してHRMのプラットフォームを何にするか考えると、HRMの部品すなわち、人材の特定の方法、処遇、人材開発などを載せても、HRMの機能を効率よく発揮できる土台になるものということになる。

  競争が厳しい世界では、ビジネスモデルは、変更をせまられるケースがしばしばである。いや、日常茶飯事といってよい。それ故、ビジネスモデルをかえるたびに変更しなければならないようなものをプラットフォームとすることはできない。「変わりにくいもの、変えたくないもの」を選ぶ必要がある。では、変わりにくいもの、変えたくないものとは何か。

  ビジネスモデルは日本の場合、現在持っているリソース人材や技術といったものをベースに決定される傾向が強い。よって人材や技術の特徴点は維持される傾向が強い。特に、どういう人を優秀と考えるか、どのようなことを効率的と考えるかといった事柄は長年の経験の積み重ねのなかから生まれたものであり、簡単には変えることは難しいし、それによって競争力を維持してきたのであり、できればかえたくはない。

  この特徴点を色濃く反映するものが組織である。(コラムvol.62参照)組織は構造A(architecture),ルーティンR(routine)、文化C(culture)、の三つで出来ているが、企業文化は簡単には変えることができないので、企業文化とマッチしないビジネスモデルを選ぶと、なかなか成功できない。大幅に企業文化を変えなければいけないビジネスモデルは選択されないのだ。

  長年にわたって築き上げた企業文化は、ビジネスモデルが変わっても変わりにくいものであり、変えたくないものなのである。だとすると、HRMのプラットフォームの候補生の一つは企業文化ということになる。しかし、企業文化とは何であろうか。プラットフォームを企業文化に求めるとすれば、改めて企業文化について具体的に整理することが必要になる。
 

好き嫌いが大事

  簡単にいえば文化とは、好き嫌いの傾向のことである。好き嫌いについてはコラムvol.10「部品の山の再定義」でビジョンの役割に触れ、「この指とまれ」と人を呼び集めるものと指摘したが、「こういう難しい長期的課題にチャレンジしたい人集まれ」という看板である以上、ビジョンは好き嫌いの表示でもある。看板の内容が自分の好みと合わない人は集まってこないからだ。

また、コラムvol.11「わが社はこういう人が好き」でも、好き嫌いが効率や評価に関係することを指摘した。だが、プラットフォームはHRMに関する部品を全て載せる土台であるので、企業文化という土台と部品の関係について、あらためて吟味しなければならない。次回は、この問題について考えてみよう。

 

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「21世紀型人材マネジメント―組織内一人親方に好ましい生態系の創り方―」をテーマに、これからも関島康雄のコラムを掲載していきますのでご期待ください。また、このコラムに関するご意見・ご感想もお待ちしております。
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