HRMの最上位の戦略目標を一言でいえば「世界中の競争相手と闘って、優秀な人材を確保する」となるが、これだけでは目標がはっきりしないのでもう少し具体な説明が必要である。複雑性に対応するために即応性が求められるとすると「ベンチのサインをいちいち見ないでも仕事のできる専門家、いわゆる組織内一人親方」が不可欠で、その数を増やすことが勝つための鍵になる。
よって、組織内一人親方の育成に役立つ施策の整備が、具体的戦略目標になってくる。二兎を追いかけることを当然視する気風や選択肢が多いキャリアパス、職位に関係なく一人一票という意思決定方式、振り返りの習慣化などがそれである。
一方で、これらの専門家に十分に活躍してもらうためには、多様な意見がぶつかり合う場を創ることが大切で、そのためには「先頭に立たないリーダーシップ」が優秀な人材の定義に含まれる必要がある。しかしこのコラムでは、リーダーシップについては、これまであまり詳しく議論してこなかった。そのため、「先頭に立たないリーダーシップ」といっても読者には何のことか分かりにくい。