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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.80  リーダーシップ開発(1) 21C型HRMとリーダーシップ開発の関係

なぜリーダーシップが必要か

  21C型人材マネジメントは、ビジネスモデルを支援するものでなければならないというのがこれまでの結論である。グローバルな世界での競争は、1)世界中に競争相手とサプライヤーがいる、2)複雑性と量を制御しなければならない、という条件のもとで、ビジネスモデルすなわち@お客さんとお客さんに提供する価値を選択し、A競争戦略を考えることになる。

だが、ビジネスモデルも戦略も考えただけで実行しなければ意味がない。実行には多くの場合、現状変化を伴うので、物事を変える際に必要な力すなわちリーダーシップが必要である。これが基本となる考え方だが、ではビジネスモデルを実行する際にリーダーシップを発揮しなければいけないこととは、具体的にはどんなことあろうか。
この点についてのこれまでの議論を整理するところから21C型HRMの新シリーズ、「リーダーシップ開発」についての議論を始めたい。

 

グローバル化の求めるもの

  リーダーシップが必要なのは、環境の変化に対応するためには現状を変えなければならないからである。
上記1)、2)の条件は、ビジネスモデルが外部環境の変化に素早く適応することを要求する。そのためには二兎を追う文化(グローバルな価値とローカルな価値の同時追及、競争優位性の活用型組織と探索型組織の併存など)と行軍速度の引き上げ(産業クラスターの活用、組織学習、正しい方向に向かって努力していても目標時間内に到達できなければ評価しない評価制度などの導入)が必要だが、これまで検討してきたように、HRMの内容をかなり大胆に変更しなければならない。(コラムvol.69〜79「HRM戦略」の章を参照)抵抗も十分予想される。

  一方、1)、2)の条件から、必要な人材は、組織内一人親方と呼ばれる「ベンチのサインをいちいち見ないでも仕事のできる人」でなければならない。この数がグローバルな競争の勝ち負けに大きく影響する。よってHRMは、上記人材の確保、育成を戦略目標とする必要がある。

  戦略の実行面に焦点を絞ると、事前に決まる戦略では、計画そのものにポイントがあるだけでなく戦略意図の伝達や役割分担の明確化に配慮が必要である。事後的に決まる戦略では、戦略眼のあるミドルの育成と、それらの人に裁量の自由を多めに与える仕掛けを工夫しなければならない。また、事前に決まる戦略であれ、事後的に決まる戦略であれ、計画の修正は常に起こるので、迅速なリソースの組み替えは必要条件である。競争相手との位置関係(勝っているか負けているか)でmake or buy の選択がおこなわれるが、どちらを選択するかの判断には時間軸が考慮されなければならない。

いいかえると、戦略を実行できる能力を獲得するのにどのくらいの時間をようするかが判断材料になる。その意味で、自己の行軍速度(たとえば人材獲得あるいは育成に必要な時間)がどのくらいかが、常に把握されていなければならないが、自己認識はリーダーシップを発揮するために必要な条件の一つである。

 

個人に要求されること

  ビジネスモデルによる競争と変革期に採用される戦略は、雇用される能力という課題をクローズアップする。ビジネスモデルの変更により必要な人材は異なってくる。真面目に努力していて有能であっても、雇用は保証されない。変化の激しい世界では、会社も転職するのだ。そのため組織に寄りかかったキャリア観では生きていくことはむずかしい。より自分の価値観に即したキャリア観が必要である。

別な表現をすれば「何になるかではなく何をするか」である。「医師になる、ではなく病気で苦しむ人を助ける」といった、より抽象度の高いキャリア目標が必要になるのだが、そのためには自分自身に対しリーダーシップを発揮し自分を成長させていかなければならない。

雇用される能力は、専門性の高さに比例する。しかし、専門性は専門分野のことだけ学習すれば高くなるというものではない。好きでないことは上手にならないし、仮説を立て検証する姿勢がなければ新しい発見はできない。自分らしさと自律性を育てなければ専門性も育たないのだ。(コラムvol.22〜36「人材開発」の章を参照)

 

「リーダーが答えを持っていない問題」の解決に必要

  「売れる洗濯機をつくる」というような、リーダーが答えを持っていない問題の解決には、多様な専門家を集め討議することにより、答えを引き出す必要がある。そのとき必要なのは、「先頭に立たないリーダーシップ」である。酸素と水素がぶつかって水が出来るように、異なる意見がぶつかることにより新しいものが生まれる。そのような状況をリードするためには、指揮命令型とは異なるタイプのリーダーシップが必要である。

  競争に勝つためには種々な分野でのイノベーションが求められるが、イノベーションには、新しい定義付け redefinition や新しい組み合わせ、が不可欠でそれらを生み出すには自由と、バラバラにならないための工夫(ビジョンやプロとしての規律、企業文化というプラットフォームなど)の二つが基本となる。時に相反するものの統合のためにリーダーシップが必要という意味で、イノベーションも二兎を追う文化の一部ということが出来る。

以上がこれまでの議論からみた、リーダーシップが必要な理由である。これらを踏まえながら、以下順次リーダーシップについて考えていきたい。

 

 

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