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21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 

VOL.84  リーダーシップ開発(5) リーダーと普通の人は何処が違うのか

定性的測定が必要

  ミシガン大学の研究が、質問紙を使って業績とリーダーの行動の関係を定量的に測定しようとしたのに対し、リーダーの行動を観察し「どんなことをしているか」に焦点を合わせたのがオハイオ州立大学の研究である。定性的な測定で、メイヨーの人間関係論の伝統を継ぐものと言える。

1963年に開発された質問は、例えば、集団の代表として対外的に行う行動5項目や、集団内外との意見の調整などに関する行動5項目などなど100項目に整理され、どの行動がリーダーと普通の人との違いを生み出すのかを調べている。

  その結果は、「構造づくり」と「配慮」に区分された項目の寄与率が極めて高いというものだった。

 

リーダーの行動は「構造づくり」と「配慮」が基本

  (この項、 金井寿宏「リーダーシップ入門」P.239〜P.242 から抜粋)

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 「構造づくり」とは、リーダーの役割を明確に定義した上で、フォロワーには何が期待されているかを理解してもらう作業であり、具体的には次のような行動である。
  ・メンバーに自分たちに何が期待されているのか知らせる
  ・決まった手順がありそれに従って欲しいと伝える
  ・リーダーのやりたいこと、試したいアイデアについて説明する
  ・メンバーに具体的課題を割り当て、仕事の日程を定める
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など等。
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「配慮」とは、フォロワーを励まし元気づける行動で、具体的には
  ・気軽に話せるようにする
  ・この集団のメンバーでよかったと思えるような心配りをする
  ・メンバーを皆、自分と対等な人間として扱う
  ・変更があればあらかじめ知らせてくれる
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など等

以上二つの発見は、以後のリーダーシップ研究に大きな影響を与えることとなった。

 

効率向上に必要な戦略計画とリーダーシップ

  リーダーが正しいやり方(大まかな指示だけし、細かいことは任せる、「構造づくり」と「配慮」に努めるなど)をすれば、効率は向上するという考え方は、戦略論の計画学派と共通する。計画学派は、ミンツバーグの分類ではデザイン学派とプランニング学派に区分されるが、事前に良く考えて戦略を立てれば上手くいくと考える。

先のセルズニックの「組織とリーダーシップ」につづく代表的な論文は1962年に発表されたアルフレッド・チャンドラーの「組織は戦略に従う」である。やりたい事業があり、そのために必要な資源を集め、実行するというプロセスを前提に戦略が立てられるので、組織は戦略に従うことになる。(コラムvol.62「ビジネスモデルは組織に従う」参照)その後、正しいやり方の見本はハーバード・ビジネス・スクールの教科書Business Policy: Text and Case として1965年にまとめられている。

  「リーダーとは何をする人か」という問いがあるように、戦略論にも、「経営とは」、「計画」とはといった問いがあるが、それらを体系的に整理したH.I.アンゾフの「企業戦略論」が出されたのもやはり1965年である。

 

変化の原因は、日本との競争

  効率という視点からみて、社会主義と資本主義の競争の次に問題となったのは70年代以降の国際競争、とりわけ日本との競争である。それに対応する形で、リーダーシップ理論も変革型リーダーシップ論、戦略論も創発学派と従来型に対抗する議論が生まれてくる。次回はそこにいたるまでの状況について説明しよう。

 

 

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