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21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 

VOL.86  リーダーシップ開発(7) リーダーも戦略も経験が必要?

いきなりリーダーにはなれない

  リーダーと普通の人との行動の違いは、構造と配慮(コラムvol.84「リーダーと普通の人は何処が違うのか」参照)だとしても、それだけでリーダーたりうるのか、というのは大きな疑問である。フォロワーに期待していることを明示し(構造づくり)、励ましても(配慮)フォロワーが動かないということは日常よく経験するところだ。では、どうしたらリーダーになれるのか。

  E.P.ホランダーは、リーダーのなり方には過程があり、いきなりリーダーになるわけではなく、順序を追って次第にリーダーになると考えた。「初めは、集団の規範に従い、業績を上げ、十分に信頼を貯金する結果、その集団に新しい変化や革新を起こして欲しいという期待がフォロワーの間から生まれ」リーダーと目される、という過程である。

信頼蓄積理論とよばれ、1974年に発表された。「まず課題面で貢献できない限り信頼は蓄積されない」、つまり、上手くいったという経験が積み重なって初めてフォロワーがリーダーを信用し、従うようになるということ。(この項、「 」内金井リーダーシップ入門による)

  リーダーになるには、成功という経験が必要という、比較的分かりやすい理屈だが、リーダーシップは状況に左右されるのでは、という疑問と同様、リーダーにはどうするとなれるのかという疑問は、その後のリーダーシップ理論の基本となる問いになる。(この信頼蓄積理論は、自分に対してリーダーシップを発揮する際、ある意味カギとなる考え方であるので覚えておいて欲しい。

 

いきなり戦略にはなれない

  戦略は、事前に良く考えて策定するものという計画学派の考え方と異なり、いきなりリーダーになれないと同様、戦略も[いきなり戦略として成立したりしない,徐々に形成されるものだ]という考え方は古くからある。理論的漸進主義とよばれるもので、戦略は、経営幹部間の意見の摺り合わせによって出来上がるという考え方である。

実態的にそうなっている、ということで、例えば高級品のメーカーは新製品を出す場合でも高級品市場を狙う傾向が強い。なぜなら、値段が高くても質のよい物を選ぶ人たちの好みや考え方にあう販売方法を熟知しているからだ。反対に汎用品が得意な企業は、通常高級品市場を選ばない。どの企業も過去5年の事業のやり方を振り返ってみれば、そこに一定のパターンが見いだせるはず。よって、戦略は「計画」ではなくこれまで「経験から学んだこと」が生み出すものだという理屈になる。

 

戦略は徐々に分かるもの

  そもそも、企業の強みも弱みも、事業をやってみなければわからないし、事業環境は変化するので、初めから全てを計画することはできない。よって、戦略は計画するものではなく、発見するもの、あるいは徐々に形成されるものだ。こういう考え方による戦略を創発的戦略と呼ぶが、70年代初めにマギル大学のヘンリー・ミンツバーグによって提唱された。

まさに生まれ方に着目した考え方で、信頼蓄積理論がリーダーの生まれ方に着目したのとよく似ていて、その後、コア・コンピタンスという考え方や学習する組織、知識創造、ダイナミック・ケイパビリティなどという考え方に発展していく。リーダーにはどうするとなれるのかがリーダーシップ理論の基本的な問いであるのと同様、どのように戦略は生まれるのかという疑問は、戦略論の基本的な問いなのである。

 

次なる疑問

  リーダーにはいきなりなれず、なるには信頼の蓄積が必要と分かったが、いったい「信頼はどこに貯まるのだろうか」と考えると、新たな疑問が生ずる。貯まるのはフォロワーの間に、である。そうだとすると、フォロワーとリーダーの関係について、もっと考えなければならない。リーダーシップ理論の関心は次第にフォロワーにも着目するようになる。

次回以降はこの問題と、「計画」と「創発」の間の論争に触れてみたい。基本的な問題とそれに対する答えという意味で、とても面白く、今後の話に繋がるからだ。
 

 

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