この質問の答えは、リーダーシップとは何かを考える上でも、戦略とは何かを考える上でも、知りたいことである。戦略論側の研究では、ハーバードの教科書に纏められているような正しいやり方はしていないとヘンリー・ミンツバーグは指摘した。(The Manager’s Job: Folklore or Fact 1975)すなわち、計画学派が考えるような計画立案や統制といった「事前によく考えるべきこと」には、実際はあまり注力していないという指摘である。(よって、戦略は初めから形成されるのではなく、徐々に創られる、あるいは発見される、という理論につながる)
一方、リーダーシップ理論の方は、ジョン・P・コッターが上級マネジャーは、事業活動を進めるのに必要な課題(非公式なものも含みアジェンダとコッターは呼ぶ)の設定と、その実行に必要な人的ネットワークの構築に努力すると指摘。(the General Managers 1982)理由は、外部環境は予想しがたく、また実行には、自分の権限が及ばない人を含めた、多くの人の協力が必要なためである。この考え方は、「実行する」ということに着目している点でミンツバークと共通している。
このようにして、「出来るマネジャーはどんな風に仕事をしているのか」と言う質問は、戦略論では創発的戦略論を、リーダーシップ理論では変革型リーダーシップ理論を生みだした。次回は変革型リーダーシップ論が盛んになる背景を、戦略論を中心に見てみよう。