ケラーマンはその理由を、社会的な力関係の変化(パワーシフト)や技術革新、社会契約(ガバナンスの在り方)の変化、といった大きな状況から説明しているが、私の場合は、リーダーが答えを持っていない問題が増えたという状況から説明している。
この問題は「売れる洗濯機を作る」という課題が設計部門のリーダーに与えられたとしよう。多くの場合、リーダーは答えを持っていない。どういう洗濯機を作れば売れるかわかっていれば、家電メーカーの設計者は苦労しない。いろいろな答えがありうるから、分からないのだ。
良くよごれが落ちる、洗剤の使用量が少ない、大量に洗える、生地が傷まない、水の使用量が少なくて済む、やすい、軽い、狭いところでもぴったり入る、音が静かなどなど。組み立てが易しいとか、壊しやすいとか、環境に対する影響がすくないとかもある。それゆえ、リーダーは当社の考える売れる洗濯機はこういうものだという答えを、何らかの方法で見つけ出す必要がある。自分の意見があったとしても、それが正解かどうかは、いろいろな人、営業部門やマーケティングの専門家の意見、実際に洗濯機を使っている人の意見、(といっても、主婦、共働きの人、単身者、老人などいろいろあり)、作る人の意見などを聴いたうえで、「当社の洗濯機はこれ」と決めなければならない。そうなると、リーダーの仕事は、「答えの分からないことに、答えを見つけること」になる。