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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 

VOL.90  リーダーシップ開発(11) チームビルディングの技術を持つリーダー

リーダーシップの終焉 The End of Leadership

  上記はハーバード大学のバーバラ・ケラーマンの本の題名で、日本での翻訳版のタイトルは、「リーダーシップが滅ぶ時代」という少しオーバーなものになっている。内容は、先頭にたってフォロワーを導く指揮・命令型のリーダーの時代は終わり、「リーダー」と「フォロワー」と「状況」の三者が同じ重要性を持つようになったと主張する。フォロワーの役割が増加して(夫婦関係でいえば、妻の立場が強くなって、というアナロジーを使っているが、これは分かりやすい。)、リーダーとの境界があいまいになってきているので、良いリーダーを育てるだけでなく、よいフォロワーを育てることが必要になっている。

また、技術革新のお蔭で、例えば、情報の流れ方が変わってきているという状況やリーダーに対する信頼感が薄れているといった「状況」を踏まえての、リーダーシップ、フォロワーシップでなければならないという主張だ。この考え方は、私の「チームビルディングの技術」とある意味、共通する部分が多い。同じコインを反対側からながめた印象と言ったら失礼に当たるかもしれないが、現在の「状況」からすると、先頭に立たないリーダーの必要性が高いという主張は共通している。
 

なぜ先頭に立たないリーダーが必要か

  ケラーマンはその理由を、社会的な力関係の変化(パワーシフト)や技術革新、社会契約(ガバナンスの在り方)の変化、といった大きな状況から説明しているが、私の場合は、リーダーが答えを持っていない問題が増えたという状況から説明している。

  この問題は「売れる洗濯機を作る」という課題が設計部門のリーダーに与えられたとしよう。多くの場合、リーダーは答えを持っていない。どういう洗濯機を作れば売れるかわかっていれば、家電メーカーの設計者は苦労しない。いろいろな答えがありうるから、分からないのだ。

  良くよごれが落ちる、洗剤の使用量が少ない、大量に洗える、生地が傷まない、水の使用量が少なくて済む、やすい、軽い、狭いところでもぴったり入る、音が静かなどなど。組み立てが易しいとか、壊しやすいとか、環境に対する影響がすくないとかもある。それゆえ、リーダーは当社の考える売れる洗濯機はこういうものだという答えを、何らかの方法で見つけ出す必要がある。自分の意見があったとしても、それが正解かどうかは、いろいろな人、営業部門やマーケティングの専門家の意見、実際に洗濯機を使っている人の意見、(といっても、主婦、共働きの人、単身者、老人などいろいろあり)、作る人の意見などを聴いたうえで、「当社の洗濯機はこれ」と決めなければならない。そうなると、リーダーの仕事は、「答えの分からないことに、答えを見つけること」になる。

 

意見を聴くではなく、闘わせることが必要

  問題は、いろいろな人の意見を聴いて民主的に結論を出せば売れるかというと、そうとは限らない点だ。皆の意見を平等に取り入れたのでは、これといった特徴のないものになり、他社の製品と差別化することができない。単に意見を聴くだけでは問題は解決しないのだ。ピカッと光る売れそうな製品(売れるかどうかは、消費者が決めることなので、これが答えと決めても、正解かどうかは、まだわからない。それでもこれが正解とリーダー以外の人も思えるもの)というところまでは、辿り着かなければならない。

そのためには、「私はこう思う、いやそうではない。なぜなら」と、意見を闘わせることによって、「お互いの思考が刺激され、なにか新しい物が生まれる」というような状況を創りださなければならない。そして、創りだされたアイデアに皆が、「これならいけそうだ」と賛同し、答えとならなければならない。このプロセスを実行するために必要なのが、チームビルディングの技術だ、というのが私の主張なのである。

 

リーダーが答えを持っていない問題が増えている

  「売れる洗濯機問題」に限らず、リーダーが答えを持っていない、あるいは答えがいろいろあって、どれを選択すべきかをリーダーだけでは決められない、という状況が増えている。次回はリーダーシップと状況の関係について考えてみよう。

 

 

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