顧客基準の変更
の典型的な事例は、スキー場の客層の変化とそれへの対応に見ることが出来る。 60年代のスキー客の中心は若者であった。学生やサラリーマンが夜行列車でスキー場に詰めかけ、宿は、民宿が主流であった。ゲレンデでの食事はカレーライスやラーメン等が中心で、高級なものは求められなかったし、提供もされなかった。 経済成長とともにお客も豊かになり、お客も若者だけでなく家族でスキーを楽しむ人も増え、「私をスキーにつれてって」の時代となると、宿は民宿から旅館、ホテルへ移行し、単にスキーを楽しむだけでなく温泉や食事にも関心が高まった。 ゲレンデにも洒落たレストランがいくつもあるようになった。現在では、お客には多くの外国人も含まれ、滞在期間も長くなってきているため、宿泊地としての楽しさが求められ、夜も楽しいことがスキー場選択の条件になってきている。
お客の変化を感知する必要が大
顧客基準は、長くお客と付き合った経験から創り出されている。しかし、お客が変れば変えなければならない。問題は、お客の変化を素早く感知できるかどうかである。 「1」の事例であれば、自分でスキーを楽しむ人は、変化を感知し易いが、民宿の経営者には簡単ではない。常連客が減り始めて変化に気が付くといった具合になりかねない。 「2」の事例で言えば、個人向けPCの営業は、量販店の営業方針やイベントに関する情報や他社の動きに敏感である必要があるが、企業が顧客である場合は、お客のビジネスモデルを理解し情報管理システムとしてどんな機能が求められるか等の知識が不可欠になる。お客さんのお客の変化とか、ITシステムの進化とかを感知しなければ、提案営業ができないからだ。
感知したことをどのように生かすか
お客さんの変化を感知できたとして、次はそれを、自分のビジネスに役立てるための対応策を考えなければならない。対応策が自分の持っている文化と上手くフィットするかどうか、の点検である。競争相手がまだ変化に気が付いていなければ、うまく対応できれば競争優位性を確保できる。時間軸基準と効力基準からみて問題ないと判断できれば次のステップ、投資をどの時点でするかとか、自分一人でやるかそれとも誰かと一緒にやるかな ど、ビジネス上の意志決定をすることになる。
だが、効力基準(このくらいの事ならできそうだという判断の基準)は主観的なものなので、時として大きな失敗に繋がる可能性を持っている。海外の企業を買収したが、上手くガバナンス出来なかった事例は、最近の東芝のケースだけでなく数限りなくある。「このくらいの事はできる」は、経験から生まれた自己認識なので、判断基準としては甘くなりやすいのだ。次回はこの効力基準について考えてみよう。