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21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 

VOL.108  人材開発―再論― (1)長寿命化の影響

 

長寿命化と個別労働契約

  処遇を広い意味で捉えると、給与だけでなく仕事や能力向上の機会も含まれる。そこで人材開発について考える前に、処遇に関する議論を整理しておこう。「処遇の水準は、市場の水準を見ながら当事者間で決める方向だが、21C型企業が求める人材である組織内一人親方は、自分で会社と雇用条件について直接交渉する。その際会社は、人材マネジメントのフレキシビリティを保つ条件の獲得に努力する。

一方個人は、給与やフリンジベネフィットの水準だけでなく能力開発に役立つ仕事や、優れたリーダーのいるチームを求める。お互い選び、選ばれる形で、双方に解約権のある個別労働契約が志向される」というのが、これまでの議論であった。この議論に新たに加わる課題が長寿命化である。これによって人材開発についての考え方は、大きな影響を受ける。

  長寿命化が進めば、年金支払期間は長くなるが、減少する生産労働人口では、年金資金を負担しきれない。それ故、年金支給開始時期は遅くならざるをえない。一方、これまで蓄えた預金も90歳前後まで生きるとすると十分ではない。不足する老後資金を賄うためには、どうしても今後は75歳程度まで働く必要がある。その場合、上記の個別労働契約はどのように機能するか、である。

 

能力差への対応が必要

  企業にとって高齢者雇用の問題点は、個人の能力差が大きいことで、一律の処遇条件で雇用するのは、合理的ではない。能力差に合わせ雇用するのがベストである。この点、個別労働契約はぴったりな制度である。プロ野球の契約改定と同じように、65歳あたりの区切りで、各人別の状況を考慮しながら、交渉によって「1年契約でこの仕事、年棒いくら」、どうしても引き留めたい人には「3年契約、再雇用交渉権あり」、能力的に問題ある人には戦力外通告をして「雇用延長せず」などと決めればよいだけだからだ。

  一方、個人にとっての問題点はなにかというと、現状、定年を過ぎて働く場合、仕事は従来の延長線で、給与水準は80%程度にダウンというのが普通である。この仕組みは雇われる方からすると、あまり嬉しくない。「経験を生かして後進の指導を」と言われても、仕事の充実感の低下は否めない。仕事が大して変わらないのに給与が下がるのも納得できない。

だが、上記のように個別契約であれば、引き続きバリバリ働きたい人も、そうでない人も働き方の選択ができる。実力や個別の事情が勘案されるのでどちらかというと望ましいと考えられる。要は、本人の実力と意思次第である。だが、専門性が高くないと交渉を有利に進めることは出来ない。

 

知識、技能の陳腐化の速度が速い

  選び選ばれる世界では、優れた人材を集めるためにカギとなる要素は、「仕事とキャリア開発の機会」であるのは、論を待たない。問題は、技術変化や社会のニーズの変化速度が速く、各人の持つ知識や技能が陳腐化する速度も速くなったことだ。その為、常に新しいスキルを身に付ける努力を続けていないと、「この指とまれ」と仕事の機会を提示されても、応募出来ないし、65歳以降の個別労働契約に向かい合うことは出来ない。よって、会社が提供する「仕事とキャリア開発の機会」とは、「新しいスキルを身につけられる仕事がたくさんあり、新しい仕事につける機会も多いという環境」と読み替えてよい。

 

教育力競争の重点は、企業から個人へ

  今から10年以上前に「Aクラス人材の育成戦略」という本を書いた。日本では、名選手しか、コーチや監督になれないが、それはおかしい。それぞれ違う仕事であり、それなりの勉強と訓練が必要である。同様に経営者も専門職でそれなりの学習と訓練が必要だという内容の本だ。そこに書かれた提言は、あまり実行されておらず、今でも十分有効なのが残念なのだが、ポイントはその本のサブタイトルである。

サブタイトルは「教育力競争時代をどう乗り越えるか」であった。勝ち負けが企業の人材開発力にかかっている時代という意味だ。将来入手する資源も含めて企業は競争するという考え方である。現在も、教育力競争時代であるのは変わらない。変わったのは、教育力競争の重点が企業から個人に移ったという点だ。次回はこの点について検討してみよう。

 

 

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