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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 

VOL.109  人材開発―再論― (2)「育つ気持ち」を育てる施策I

 

人が成長するための条件

  人が成長するのに必要な条件は三つある。「育てる力」と「育てる場」と「育つ気持ち」「育てる力」は、教育プログラム、上司の指導や同僚のアドバイスなど、成長を手助けしてくれる力である。育ってほしいと期待する周りの気持ちも、これに含まれる。「育つ場」は、仕事、家庭、地域社会など、成長に役立つ経験が出来る場所である。広く社会全体や会社という組織が提供するものだが、家庭や趣味など、自分で育つ場所として活用できるものもある。「育つ気持ち」は、「成長したい、成長しよう」と思う意思で、これが無ければ成長はあり得ない。(因みに成長とは、自分で決められるものの範囲が広がることとここでは定義している)

 昔から、「馬を水辺に連れて行っても喉がかわいていなければ水を飲まない」という表現で知られているが、育てる力や育てる場があっても本人にその気が無ければ、成長はない。その意味で三つの条件の中で最も大切である。育てる力や育てる場は、多少不足があても、工夫次第で不足を補える。それゆえ、人材開発の施策は、「育つ気持ちを育てる施策」に重点を置くべきである。これは一般論として普通の意見だが、再論で特に強調する理由は、人材の特性が変わってきたためである。

 

戦略ミドルが不足している

  いま一番、「育つ気持ち」を持って欲しいと思うのは、課長クラスである。理由は、80年代日本企業が世界と闘えたのは、戦略ミドルと呼ばれる「実務能力が高いだけでなく、ビジネス全体を見渡す能力も高い人々」が随所にいたからである。この人々のお蔭で日本企業は、「撃て、狙え、型戦略」(事前に決める戦略ではなく事後的に決まる戦略、拙著『キャリア戦略』第3章 日本企業の特徴1 ビジネスモデルは内部資源に左右される(1)「「事前に決まる戦略と事後的に決まる戦略」に詳しい説明あり)を採用することができた。

「撃て、狙え、型戦略」は、日本企業の得意技であったのだが、現在では、戦略ミドルの不足で、得意技が使いにくくなっている。さりながら、ビッシリと細部まで決めた「事前に決まる戦略」に移行できるほど戦略立案能力の高いスタッフをそろえているのでもないし、決められた通り戦略を実行できるラインが整っているわけでもない。日本企業の戦略は中途半端になっているのだ。それが失われた20年を作り出した原因の一つであると考える。

 

現在の課長クラスの問題点

  経団連のグリーンフォーラムという選抜課長研修のアドバイザーを、1期生から勤め、今年は13期生の面倒を見ている。10年以上課長クラスの定点観測ができる立場にいたわけで、お蔭でいくつかの変化に気が付くことができた。始めに気が付いたのは、「目標値が低いのと身の周り以外のことには関心が薄くなった」という変化だ。10年程前から北海道大学で、企業に就職を希望する博士課程、修士課程の学生に、キャリア開発についての授業をしてきていて、この1番目の特徴には気が付いていたので、「課長クラスでもそうなのだ」とあまり驚かなかった。ところが、7年ほど前に「グループ討議がうまく出来ない」という2番目の特徴に気が付いた時はかなり驚いた。学生もそうだったのだが、社会人になれば変わると思っていたからだ。

  3番目に気が付いたのは、「説明が長いので『一言で言うと』という質問をすると、うまく答えられない」現象だ。これはグループ討議ができないのと同じ原因で、物事の優先順位、大中小関係をつける習慣に乏しいためと思われる。これが4番目の、「実行計画が上手く立てられない」という特徴につながる。グリーンフォーラムではリエントリープログラムとして研修終了後、「習ったことをどう活用するかを考える100日プラン」を作成してもらっているが、最近は、計画が、実行を上手く担保するようにできていないケースが増えている。
自分で計画を立てて、自分で実行するという体験も乏しいのでは、と心配になる。

1〜4番目までの特徴は、6期生以降1と2、10期生以降1と2と3、というように積み重なって来ていて、1〜3期生に比べるとだいぶ10期生以降は課長としての能力に差があるように感じられる。これでは日本の将来は、大いに心配である。育ってもらわないと困るのだ。
1〜4が起こる理由はいろいろあるが、共通するのは、物事の理解の仕方が「キーワード理解で文脈理解ではない」という点だ。次回はこの点について考えてみたい。

 

 

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