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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.110  人材開発―再論― (3)「育つ気持ち」を育てる施策II
 

4つの問題点の原因

  共通の原因はいくつかあり、「自分に自信がない」はその一つだが、自信がないのは意見をぶつけ合う経験が乏しく、自分の意見がどの程度受け入れられるのかが分からないからで、また、受け入れられるよう必死に努力した経験も薄いからである。自信がないので議論に際し、反対意見や修正意見を述べるのを避ける。反対意見をいうと相手を傷つけるのでは、という感じ方もそれを助長する。しかし最大の理由は、何かを理解するときのやり方が、キーワード理解で文脈理解ではないという点だ。このことは薄々気が付いていたが、それは一部の人の特徴と思っていた。そうではないと教えたのは3年前に導入したe-leaning である。

 

キーワード理解とは

  3DLAのe-learning は反転学習として作られていて、クラスでの授業の予習になっている。クラスに参加するためには、e-learning 修了が条件で、普通のものと異なり理解度テストが2回ある。1、2章の学習後に1回目の理解度テストがあり、これに合格しないと3,4章に進むパスワードがもらえない。3、4章を学習した後2回目のテストを受ける。これに合格して初めてe-learning修了となる。また、テストは2回不合格になると追試を受けなければならず、それには、別なパスワード申請が必要になる。

  テストは文脈理解ではなくキーワード理解だと引っかかるように作られている。キーワード理解、文脈理解とはこの場合、関島の勝手な定義で正しいかどうかは不明なのだが、以下のように考えている。キーワード理解とは、日本の話をしていて、「一番高い山は?」という質問に、「エベレスト」と答えるケースをいう。教科書の定義や使われている前後関係をよく把握せずに、自分が持っている解釈で、言葉を理解してしまうので、キーワード理解だと教えようとしたことが十分伝わらない。  

  このe-learningを現在までに、150人以上の課長さんが受けているが、平均的結果は次の通り。

A(2回のテストとも1回で合格):20%
B1(第1テストのパスに2回以上かかったが第2テストは1回でパス):30%
B2(第1テストは1回でパスしたが第2テストは2回以上かかった):30%
C(2回のテストとも、合格に2回以上かかった):20%

全体の80%の人は、多かれ少なかれキーワード理解の傾向ありという結果だ。
 

働き方改革が難しい理由の一つ

  キーワード理解の問題点は、例えば、「効率向上」を目標と掲げた場合、「効率向上」の解釈が各人ごとに異なるので、特段の摺り合わせでもしない限り、効率向上のためにやらなければいけないことについての理解もばらばらになってしまう点にある。このため世代が異なったり、仕事や地位が異なったりすると、コミュニケーションが上手くいかない。また、文脈を考えないので、「働き方改革」も「長時間残業の削減」に短絡してしまうといったケースも派生する。

  効率向上のためには、個人の効率向上だけでなく組織としての効率向上が必要で、チームとしてメンバーの上下左右の良好なコミュニケーションが求められるし、仕事が異なるチームとの間のコミュニケーションも良好でなければならない(コーヒーブレーク46〜「働き方改革」とチームビルディング 参照)。

  言うまでもなく、働き方改革に果たす課長クラスの役割は大きい。はやくキーワード理解の問題点に気が付いてもらわなければならない。

 

議論をしなければ違いに気が付かない

  一つの言葉の理解が人によって異なることは、本をよく読んだり、立場の違う人と議論したりしてみないと、気が付かない。現在の課長クラスは、そのどちらも得意ではないというのが、私が持った印象である。ではどうするか。次回はこの点について考えてみよう。

 

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