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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.112  人材開発―再論― (5)「育つ気持ち」を育てる施策IIII
 

まずは自分に対する信頼性の貯金

  「自分に対してリーダーシップを発揮する」の具体例が、「自分で立てた計画を実行する」であった。実行できれば、リーダーとしての自分にたいする信頼性が高まり、フォロワーとしての自分も従いやすくなる。よって、自信が出来て、もっと難しい課題に挑戦できる。

実行できないとサイクルが反対に回るので、自信を失い、難しいことは避けるようになってしまう。「自分で立てた計画を実行する」は、両刃の剣で良い方にも悪い方にも働くのだが、まずは、育つためのエネルギーの源泉として自分に対する信頼性の貯金に励まなければならない。

 

育つ機会を求めなければならない

  自分に対するリーダーシップを発揮する次の場面は、勇気を奮い起こして新しい課題や少し難しい問題にチャレンジすることである。自分を育てる仕事に取り組む機会にしり込みをしてはいけない。

  昨今、女性の管理職育成がやかましく言われ、管理職層のX%を女性にするなどの目標数値を定めるのが流行である。しかし、総合職制度が出来る前に入社し、実力で部課長のポストを獲得したベテラン女性管理職には、数値目標などの施策は不評である。私がインタビューした人の大部分が、最近の管理職予備軍に対し厳しい目を向けている。男女を問わず、仕事は与えられるものと考えていて、自分から採りに行っていないことが不満なのだ。「女性に対する偏見を実力で跳ね返した世代の意見だ」と決めつけてはいけない。そういう側面もないではないが、「自分で成長の機会を見つけチャレンジする」が育つための条件であるのは真実だからだ。言われたことしかしないのでは「育たなくて当然」である。

 

他流試合をするべし

  自分にリーダーシップを発揮してがんばるためには、自分の能力や意欲のレベルが、他人と比べてどの辺に位置するかを知る必要がある。端的に言えば、製品で言うところの「他社とのベンチマークの実施」である。社内であれば、目標とする先輩との比較や同僚との比較が中心となる。しかしそれだけでは不十分で、他社の同じような仕事や地位にある人との比較が不可欠だ。同じ社内だと、どんぐりの背比べという事態にもなりかねない。

  他流試合の機会に一番良いのは、社外の教育プログラム、それも厳しいという定評があって、いろいろな会社の人が受講しているものが良い。3DLAのセミナーでは、毎回宿題が出るが、宿題を全員が交換するルールになっている。他人の回答を見ることによって、自分の出来不出来が分かるようにしているのだ。

 

自分を決めつけず、自分に期待し、自分を鍛えるべし

  人を育てる時の基本は「決めつけず、期待して、鍛える」である。これは自分を育てる時にもあてはまる。「自分は才能がない」とか「こういうことは不得意」と決めつけてはいけない。「自分ならきっとできる」と自分に期待し、偶然性を味方に付けるという考え方に立って、めぐってくる場面、場面でがんばる。そうすれば好ましい偶然に巡り合える。

  鍛えるには、出来るまで何回でも練習を繰り返すガッツも必要である。一方で75歳まで働くようになる時代が近づいている。闇雲に取り組むのではなく、自分を育てるための戦略を立てて実行しなければならない。そのためにも、「5年後何をしたいと思いますか、
3か月後何をしているべきと考えますか、そのために今何をしていますか」といった質問を、ときどき自分に問いかけるのが良い。

 

育つ場

  ここまで、教育力競争の重点が、長寿命化などの影響で、企業の教育力から個人が自分を育てる力に移りつつあるということで、「育つ気持ち」について考えてきた。しかし、人材開発を考えるには、当然「育つ場」についても、考えなければならない。次回以降、育つ場としての組織の変化について、考えてみよう。

 

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