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MIAコラム:キャリア形成と戦略

キャリア形成と戦略(6)ゾーンBの卒業時期 

面白い理由の探索

 時間を使っても平気なこと、すなわち好きなことが見つかったとしよう。次に必要な作業は、そのことが好きな理由を考えることである。私の場合、本を読むのに費やす時間が非常に多い。よって、どの分野の本を読んでいるかを分析すると好きなことが見えてくる。圧倒的に多いのは推理小説それも謎解きよりは冒険小説に近いもの、戦記や歴史に関するもの、経済学、経営学、戦略理論と株式投資。どうやら、リスクと勝ち負けが伴うもの好きそうである。普段の生活を振り返ると、計画をあまり緻密に作ることは避ける傾向があるが、いつかやりたいことはいつも考えているので、長期の計画性はあるらしい。概ね目標とする方向に進んでいればとりあえずよし、とする性格である。
好きなことから考えると、私が大切としているのは、何かをやりとげることで、達成感や自律性や独創性、といった価値がそれにつながっていると思われる。

 

目標の範囲を狭める

 自分の大切だと思うことが、ぼんやりでも分かってくると、キャリア目標の範囲もある程度狭まってくる。自分はサラリーマンには向かないとか、人間関係の調整は得意でないので、研究一筋の方がよさそうだとかである。自分のことが十分に理解できないまま一時の感情のたかまりで決めてしまった目標、例えば小説家になる、が間違いだったとわかったのであれば目標の変更が必要になる。ゾーンCから引き返してゾーンBでもう一度やり直すのが良い。人生は長いので、ゾーンCでの経験もけして無駄にはならない。自分を知る事に関しては、ゾーンDからBに特段のトラブルなく移った人よりは、はるかに上になっているかもしれないのだ。

目標の範囲が狭まれば、それに向けての準備に取り掛かることが出来る。専門分野の中でも得意な分野が少しずつ見えてくるので、範囲を広げたり、さらに深く追求したりといった作業が出来るようになる。そうなればゾーンBの卒業の時期が近づいたと言えよう。

 

目標の決まり方と戦略

 自分のこともある程度わかり、目標の範囲も狭まれば、とるべき戦略について考え始めなければならない。ただし、心に留めなければならないことは、全ての人に当てはまる戦略は、存在しないということだ。目標とするキャリアを取り巻く環境と本人の状況の組み合わせは多様であり、一つの戦略で全て対応することはとてもできない。そもそも戦略は、コンテキスト(位置関係)に依存した特殊解とみなすことが出来る性格を持っている。しかし、組み合わせの多様性ばかりに着目したのでは、何を手がかりに戦略を選択したらよいかわからなくなってしまう。よってここでは、コンテキストにはあまりこだわらず、目標の決まり方に応じて選択できる戦略の典型例を挙げることにしたい。

 

先行優位の戦略 / 競争優位の戦略 / 目標の成熟度にあわせて投資する戦略

 自分のこととやりたいことが人より先にハッキリと分かった人がとるべき戦略は、先行優位の戦略である。目標達成に必要な条件の整備に人より早くとりかかり、競争相手より優位な位置を確保する戦略である。そのために、良い指導者に早く就くとか、目標に関係する知識やスキルを勉強する機会が多い学校や仕事を選択することを心がける。選択したキャリアが従来からあるもので、キャリアを取り巻く競争の状況が予測可能な場合は、自分の特徴点にあわせて競争の仕方を選択する戦略が採りうる。競争の状況とは例えば、その分野で専門家になことの難しさの程度などで、難しければそのキャリアを目指す人の数は少なく、やさしければ多い。自分の特徴点とは、時間やお金、学習能力など自分の持つリソースがどの程度かということ。弁護士と言うキャリアを選んだとして、お金があれば、退職して受験勉強に打ち込むという競争の仕方がえらべる。

キャリア目標が「撃て,狙え」のような手法でゆっくりと分かってきた場合とりうる戦略は、目標の明確度が増すごとに自分への投資や、仕事をする環境への投資を増やしていく戦略である。自分への投資とは、仕事に必要な能力向上に時間とお金を使うことである。

次にはそれぞれの戦略についてもう少し深く検討してみよう。
 
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 関島康雄のこのコラムは、MIアソシエイツのホームページに、2006年12月より9回にわたって掲載され、好評であったので、3DLAのホームページに載せることにしたものです。再掲に当たり、読みやすいよう表現を修正、図表やイラストを入れ、説明不足な点を書き加えましたが、内容的には大きな変更はありません。(本サイトでは全10回での掲載)
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