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3Dラーニング・アソシエイツ

コーヒーブレーク(9)

 
ブレンド型 e-learning の開発III

e-learning とクラスの授業は補完関係

  e-learning 部分はクラスでの授業の予習の働きをする。クラスではケーススタディで e-learning の内容の理解度を確認し、あやふやな部分を再度解説する。受講生は e-learning の際よく理解できなかった部分や疑問に思ったことをQ&Aで確かめる。その上で新しい概念を学ぶ。e-learning とクラスでの授業がお互いに補完する関係になる。

  以上がブレンド型のコンセプトだが、実際に実行するとなると簡単ではない。「学生が分からないこと」が「教える側が想像していること」とかなり異なるからである。この対策として昨年5月、ビジネスパーソンとしての基礎知識を受講済みの学生対象に、試作版によるテストをおこなったが、結果はやはり「ヘー、こんなことが分かり難いのだ!」であった。

  例えば、ロングテールの法則を説明した図が分からない。理由は、品揃えには限りがある(店頭に陳列できる商品の種類は、売り場面積で制限される)ということがピンときていないため。

  創発型の戦略の説明で、「遠くが見える高台」の意味が分からない。理由は、比喩的な表現を具体的な事象(この場合は、開発に成功すれば新製品の実現の可能性が高まるような技術、あるいは、成功すれば新たな市場への参入方法がわかるようなプロジェクト)に結びつける力が弱いためなどなど。結局、PPT13枚の作成や手直しが必要となった。

  

クラス授業のカリキュラム

  始めの90分はe-learning で扱ったテーマ「外部環境の変化とキャリア開発」の復習と理解度確認にあてた。具体的にはウォールマートの事例を使ってビジネスモデルについての理解を確認、またグローバル化の影響については、アパレル産業の対応策の事例をとりあげ、企業が事業をする国や地域を選ぶことを再度認識させた。その上で、ビジネスモデルも戦略も実行しなければ意味がない、実行するにはリーダーシップが必要ということで本題のリーダーシップ研究に取り掛かるという段取りである。

  リーダーシップ研究は、グループ討議、発表、発表にたいするコメント、講義という順序でおこない、最後に理解度テストをおこなった。理解度テストはe-learning のときにも回答は手書きで提出なので、すでに経験済みであり取り組みやすいのだが e-learning の時のように前に戻って学習するということはできない。よって授業中の集中力、理解力が問われることになる。クラスの講義に使ったPPTは理解度テスト終了後配布なので参考にすることはできない。肝心なポイントをノートできた学生が有利になる。
 

ブレンド型の効果

  ブレンド型授業の効果は、正確に測定していないので印象論の域を出ないが、教える側の感触を言えば、従来に比べクラスでの討議が活発であったし、質問の内容が良いものが多かったと思う。以下は学生の反応である。(アンケートの回答をそのまま記載)

■e-learning は数度勉強できるので、授業内容をよりよく理解させられる。
■今まで自分が知らなかった言葉なども多かったが、それらの意味などが文面で書いてあるので何度も復習できてよかった。
■今後のキャリア形成や、リーダーシップについて学べて満足した。ビジネスモデルについて勉強できたこともよかった。
■ビジネスの世界の時代背景、ビジネスパーソンとしてどうあるべきなのかを、自分のペースで分かりやすく学習することができた。
■ ビジネスパーソンとしての考え方、知識が身に付いた。とくに、web で行えるため、分からないところを繰り返し扱えることが、基本を学ぶ上では良かったと思う。
■グループワークがあって、議論の進め方や言葉の定義の重要性を学べた。
■ リーダーシップとは何か、どうしてリーダーシップが必要なのかをグループ討議等を交えながら学習できたのがよかった。刺激的な授業だった。 

  以下は自由意見欄に記載があったもの。
■e-learning は繰り返し見れてよかったがダウンロードするのに非常に時間がかかったり、インターネットの接続状況が良くないとうまく利用できなかった点で面倒であった。
■ e-learning は自由に進めることができ、分からないところは聞き直すことができるので、予習の課題としてはとても良いと思いました。e-learning を受けて講義にのぞむことでとても意義のある出席になったと思う。
■ WEB 学習は音声があることで、取り組みやすかったです。
■日本学生とのグループワークは初めのです、みんなからいろいろなことを勉強した。
■WEB学習を踏まえて発展させた内容で、疑問に思っていたことも解決できました。
■ リーダーシップの議論では結果が良くなかったが、その失敗から、次にこういう機会があったら頑張ろうとおもえる講義であった。その失敗のどこが悪く、何を意識して議論すればよいかも教えてもらえたことが大きいと思う。

 

今後の方向

  ブレンド型e-learning は作るのに時間とエネルギーが必要だが有用な学習方法だと思う。今回のものはプロトタイプに過ぎず改良の余地はたくさんあるが、学習をe-learningと学習者に任せきりにしないで対話の機会を増やすというコンセプトは、十分機能するという印象をうけた。
今回の経験を他にも適用したいと考える。「24年版ビジネスパーソンとしての基礎知識」をもっと良いものにするのは言うまでもない。

 

本テーマの続きもぜひご覧ください。
・コーヒーブレーク(26)ブレンド型 e-learning の開発IV


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