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コーヒーブレーク(12)

 
荒野でのリーダーシップ訓練

  ウォートンのリーダーシップ・コンフェレンスで面白かったものの一つが、厳しい自然環境のなかで行うリーダーシップトレーニングの紹介であった。講師は、元海軍のジェットパイロットでありその後宇宙飛行士としてスペースシャトルの船長を務めたJeffrey S. Ashby さんと、National Leadership School (NOLS)のダイレクター John Kanengieter さんのふたりで、交互に画像を使いながらの説明がとても印象的であった。

その内容を説明するのは画像がないので難しい。そこで、ハーバード・ビジネス・レビュの2012年4月号に掲載された記事 Wilderness Leadership ? On the job(コンフェレンスで資料として配布されたもの)を材料にトレーニングの考え方を解説しよう。

 

予測不可能な事態が起こる荒野は、リーダーシップ開発に適している

  荒野を踏査しようとすると、その行程で無数の判断をせまられる。判断の結果は自分だけでなくメンバー全員に降りかかってくるので、おのずと結果を考えて行動するようになり、失敗の経験は身に染みる。だから厳しい自然wilderness のなかでの行軍はリーダーシップのトレーニングに最適なのだ。

NOLSは年間15000人を荒野に連れ出し訓練している。リーダーの資質を持っていないと思う人もリーダーシップ学ぶことができると確信している。ポイントは次の5つ。練習practice leadership、全方位からリードするlead from everywhere, 適切な立ち振る舞いbehave well、冷静・沈着 keep calm、頭をクリアーにするdisconnect to connect である。

順番に説明しよう。

  

練習

  簡単な決断、例えば、いつどのくらい長く休憩を取るかというような小さなものから始め、ガイドなしに道の無い原野を通って目的地にたどりつくためのコース設定というような大きなものまで、一歩一歩学んでいく。確信が持てなくても判断せざるをえず、その過程で失敗から学ぶことが求められる。(戦略論でいうFire, Aim 狙ってから撃つのではなく、撃ってみてその結果から判断し、狙って撃つ、という考え方の練習ということができる。関島)

 

全方位からリードする

  伝統的な指揮命令系統と違って、訓練では上下の関係が存在しない。リーダーに任命された人が責任をとるとしても、積極的にリーダーを支える人active followersが周りに必要である。全員が共同責任者peer leadersでもあり、自分に対してリーダーシップを発揮し率先垂範することexercise self- leadership も求められる。場面、場面で求められる役割をはたさなければならないのだ。(関島的な表現をすれば、主役は持ち回りで、先頭に立たないリーダーシップが必要)

 

適切な立ち振る舞い

  困難な状況では、仲間と協力して役割を果たすだけでなく、自分自身や仲間を奮い立たさなければならない。意見の対立も迅速に解決しなければならない。利己的な行動や不用意な発言はすぐ明らかになってしまう。お互いの感情を理解し、意思疎通を図ることがなりよりも必要である。

 

冷静・沈着

  リーダーに必要なのは、不利な状況や先が見えない状況にあっても落ち着いて行動することである。プランAが思いがけない事柄(例えば天候の急変)により変更を迫られたとしても代替案プランBが準備されていればあわてることはない。なによりも、不確実性は普通のことと受け止める姿勢が大切である。
 

頭をクリアーにする

  物事を考えようとするときには、時に、周りに溢れる情報を遮断し、静かな環境で熟慮することが必要である。荒野での訓練は、心理学でいう「関心事のリセット効果」をもたらす。雑事から離れ、頭のなかがクリアーになるので、本当の問題は何か、今、しなければならないことは何かなど課題を整理し、新たな方向を決め、夢を育てる良い機会となる。

荒野でのリーダーシップ訓練、なかなか面白そうではありませんか!

 
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