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3Dラーニング・アソシエイツ

コーヒーブレーク(14)

 
クラウド・コーディネーターの育成が必要

大型システムインテグレータは絶滅危惧種?

  IT産業に大きな変化が起こっている。大型のITシステムをつくる会社の売り上げは、毎年少しずつ減っていて、絶滅危惧種の方向に進んでいる。これは、システムをお客さんの要望に従って、根っこから作るというビジネスモデルが、時代に合わなくなりつつあるからだ。
むろん、パッケージを活用したり、既存のプログラムを再利用したりという方法でコストを下げる努力は今も続いている。しかし、そういう努力では、クラウド・コンピューティングcloud computingの採用により劇的にコストをさげたシステムには対抗できない。ITシステムは、開発する時代から組み立てる時代に移りつつあるのだ。

 

システムに仕事を合わせるか、仕事にシステムを合わせるか、の違い

  クラウド・コンピューティング(以下クラウド)とは、簡単に言えばネットワークやストレージ、アプリケーションなどのサービスを必要に応じ、オンデマンドで活用する方法である。クラウドは、アメリカでは急速に広がっているが日本の場合、普及の仕方がやや緩やかな感じがする。理由は、仕事とITシステムの関係の違いである。

アメリカの場合、ITシステムに合わせて仕事をするが、日本は仕事に合わせてITシステムが造られている。例えば、私が社長をしていた米国会社の場合、サプライ・チェーンで闘っていたため、「こういう仕事の仕方をしてくれると部品調達と製品の製造・販売がうまく連動し、コストが低減、顧客満足度も高まるが、ITシステムはそれをサポートするように造った。

よって勝つために、ITの指示するフォマットが埋められるよう仕事をしてくれ」と繰り返し説明した。ITシステムは、大きなテーマを達成するためにつくられているのであって、通常の仕事に便利なように造られているわけではない。

  ところが日本の場合は、コンピュータにより仕事の効率を上げるということが発想の中心にあり、仕事に合うようにITシステムが、造られてきた。このため、アプリケーションに合わせて仕事をすることに、簡単になじめない。自分のやり方で仕事をするほうが優先するので、オンデマンドで標準的なアプリケーションが安く使えるといっても、あまり魅力を感じないのだ。
だが、ハードもソフトも使用時間についてだけ料金を払う仕掛けが普及すれば、システムを根っこから作る場合とのコスト差は覆いがたくなる。世界と競争するためには、クラウド対応は避けて通ることはできない。

 

クラウドの導入をSEがサポート出来ていない

  現状、自社向けの特注システムで仕事をしている大企業の場合、これまでの投資を簡単には放棄しにくいため、クラウドのメリットは理解しても簡単には踏み切れない。一方、中小・中堅企業ユーザーの多くは、抱えるIT専門家の数も少ないので、まだクラウドのメリットを十分には理解していない。

それゆえ、注文を取ろうとするとSEは、(1)そもそもクラウドとは何か、導入するとどのような効果があるか、というあたりから説明を始めなければならないが、コスト面は説明できても、仕事がしやすいかどうかというあたりで、躓いてしまう。

   また、大企業では関連する部署が多岐にわたるため、中小企業ではITシステム導入の経験が少ないため、(2)社内の意思統一、すなわちトップと部課長仕事の現場、あるいは製造と営業といった人々の間で、「どのようなことをITシステムに期待するか」についての合意形成が、上手く出来ない。この問題は昔からSEが抱える問題で、出来上がったシステムが依頼したもと違うというトラブルはたくさんあり、SIビジネスの赤字の原因となって久しいが、クラウド導入でも同じ問題が繰り返される可能性が高い。

  システム設計にあたっては、クラウドは造るのではなく組み立てるのであるから、(3)これまで以上に部品についての知識がなければならないが、これまで造ってきたので、自社の持つ部品についての知識があるが、汎用的な部品についての知識は十分でないきらいがある。
(1)〜(3)の理由で、現在のSEは、今後システム建設の主流になると思われるクラウド対応をサポートする準備が出来ていないと言わざるを得ない。

 

SEのリフレッシュ教育が必要

  では、どうするかだが、答えは、クラウドに関する知識が豊富で、かつ合意形成能力に優れたSE、クラウド・コーディネーターの数を増やす以外にない。次のコーヒーブレークでは、その育成のための教育プログラムについて考えてみよう。

 以上 
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