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コーヒーブレーク(30)

 
組織内一人親方のすすめ 2.0 I
 

組織内一人親方のすすめの続編を9月に出します

  「組織内一人親方のすすめ」を書いてから10年が経過した。この間、ビジネスを取り巻く環境は大きく変化した。グローバル化の進展に伴い企業は、「不確実性と複雑性の制御」という課題に取り組まなければならず、ベンチのサインをいちいち見ないでも仕事のできるプロ人材を、ますます必要としている。内部リソースの組み換えは、頻繁に行われることとなり、個人にとっては、キャリアの追及のうえで「組織は活用するが、寄りかからない」という姿勢が不可欠となった。要は、組織内一人親方のニーズはこの10年間、いっそう高まったのだ。「組織内一人親方のすすめ」が主張することは少しも古くなっていない。

  しかし、そこで取り上げた事例は、さすがに時代離れがしているものがあるし、読み手の方も変化しているので、従来の説明の仕方では理解しにくい面も生まれている。出版社の在庫もなくなったのを機会に、「プロ人材に自分で育つ方法」について解説するという視点から、全面的に書き直すことにした。前著でもサブタイトルは上記であったので、同様の視点は持っていたのだが、組織内一人親方像の説明に力点があった。今回は読者層の変化に対応するため、プロ人材が必要という意見の背景にある戦略論やリーダーシップ理論の説明の仕方に工夫が加えられている。

  組織内一人親方を目指すことを進めるという意味では、続編でもあるし、10年の変化を取り入れたという意味でバージョン・アップ版でもある。
以下このコラムでは、新たに書き直された部分について順次紹介することにしよう。特に、議論が複雑になることを避けるため本の中では深くは説明しなかった、議論の背景にある理論について解説したい。

 

不確実性対応策

  まず初めに、10年間の変化の中で最大のものである不確実性の増大にどう対処すべきと考えて書き直したかを取り上げる。

  不確実性に対応するための方法論はいろいろあるが、関島が事業を経営する上で実際に使ってみて有効と感じているものに、「遠くが見える高台の見つけ方」と呼ぶ方法がある。これはいつも、「撃て、狙え、型戦略」とセットで考えることにしているが、敵がどこにいるか分からない時に、「まず、敵が居そうな藪に向かって撃ってみる」という考え方の補完方法である。
  そもそも、「敵が居そうな藪」もどれだか分からない場合どうするか、である。どちらの方向に行けばよいかが分からない時、どこか遠くが見える高台に登って方向を定めるが、その高台view pointをどうやって見つけるかという方法論に相当する。

  やり方は、二つの座標軸、例えば技術と市場を、プラスサイド(自分のよく知っている部分)とマイナスサイド(自分がよく知らない部分)に分けて4象限を作る。自分のビジネスの内容をこの4象限に当てはめると、通常、知っている技術を知っている市場に適用するというプラス、プラスの象限に入るものがビジネスの60%を占めているという形になる。知っている技術を新しい市場に適用したものや、新しい技術を知っている市場に投入したものもあるはずだ。
この各象限に一つか二つテストプロジェクトを設け、実行することにより、どの技術を深堀すればよいか、どの市場の知見を増やしたらよいか、技術と市場の新しい組み合わせの可能性はどこにあるかなど等、進むべき方向を見つけて行くというのがその方法である。

 

キャリア形成も不確実性対応が必要

  不確実への対応が迫られるのは企業経営の世界だけではない。研究開発や金融の世界も不確実性は高いし、そういう環境の中でのキャリア形成も当然、不確実性が高い。ということは、遠くが見える高台の見つけ方という手法は、経営戦略の立案に役立つだけでなく、研究開発にも金融のリスク対策にもキャリア形成にも活用できるということになる。

もちろん座標軸の定義は、広い意味で技術や市場に相当するもののなかから、より適したものを選択する必要はある。だが、不確実なことの中身を4象限に分けることでより具体的に捕まえることができ、それによって対策を立てやすくするという手法は共有できる。

  実際、金融理論と戦略論の相互の交流や、研究開発のマネージの仕方に金融のリスク管理の手法を取入れることなどは、既に実行されている。ではキャリア形成について適用するとどうなるか試してみようというのが、書き直しの背景にある。次回以降それについて解説しよう。

つづく

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