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3Dラーニング・アソシエイツ

コーヒーブレーク(39)

 
長寿命化とキャリア戦略2 戦略目標の設定

戦略的アプローチが必要

  解決に時間とエネルギーをようする問題に取り組むとき必要なのは戦略的なアプローチ である。長寿命化によってキャリアと考える期間が長くなったので、自分らしい人生を送るためのキャリア戦略も、少し修正を迫られる。

 

戦略目標

  戦略立案の始めにすることは、目標の設定である。コーヒーブレーク(38)で述べたように75歳まで働く時代になった場合、個人は第2、第3のキャリアを持つ必要にせまられる。一方会社の方は、個別労働契約を普通とする人材マネジメントを構築しなければならない。問題は、上記の課題を同時に達成することが求められる点で、どちらか片方だけでは75歳までの継続雇用は上手くいきそうにない。しかしどちらも、すぐには達成できない難しいテーマであるので、戦略的思考すなわち、そこに至る筋道を(途中の障害を計算に入れながら)考えることが、必要になる。

  戦略目標には階層があるのが普通なので、最上位の目標を「自分らしい人生を送るためのキャリアの追及」とすると、「75歳まで働くために個人及び企業などの組織が準備しなければならないこと」は、中位の目標に相当する。自分らしい人生を送るために個人は、75歳まで働けるよう複数のキャリアを築かなければならないし、75歳以降の過ごし方の準備もしておかなければならない。一方で組織の方は、現在65歳までの雇用で起こる問題点を、75歳まで働く時代に引きずらないよう人材マネジメントの修正を計らないと、競争優位性を失いかねない。

  下位の戦略目標の具体的テーマは個人の場合は、組織内一人親方卒業後の生き方のイメージづくり、企業の場合は、各人別労働契約のプラットフォームとデバイスの整備、と仮において以下順次検討しよう。「撃て、狙え」で歩き出してみて、よりふさわしい目標が見つかれば修正することになる。

 

75歳以降の生き方のイメージ創り

  イメージできないことはマネージできない。それゆえ「75歳まで働くなんてとんでもない。65歳までどうするかを考えるのも大変」などと言わずイメージしなければならない。ヒントは既にある。現在の定年退職者が何をしているかを分析、何を修正しなければならないかを考えればよい。  定年後上手くいっている人は、主体的に生き方を選択している。
大きく分けて

  1. 従来の仕事の延長線上の仕事をしている

  2. 従来の仕事とは別な分野(含む趣味)の仕事をしている

  3. 旅行やゴルフなどで余生を楽しんでいる
    (社会参加、健康保持の目的で週1〜2回働く、もこの分類に入る)

の3つであろう。この場合、仕事はフルタイムかどうかを問わない。(3)は資金的に恵まれた人という感じを持つかもしれないが、それだけではなく地域社会に溶け込んでそれなりに楽しむというタイプもある。

  組織に寄りかかって過ごしてしまい特段の専門性を育てなかった場合は、(1)から(3)の選択は難しいので、この選択の前提は、定年までに 一人親方(self employed)としての自分を確立していることになる。問題は75歳時代にはどこを修正しなければ、いけないかである。

 

専門性とニーズの整合性が問題

  コーヒーブレーク(38)で述べたように、働く期間が長くなると、その間に知識技能の陳腐化と産業構造の変化が起こることは避けられない。その為これまで培った専門性と社会のニーズのあいだに不整合ができる可能性が高まる。二つ以上のキャリアが必要な理由がここにあるので、従来以上にキャリア追及の努力が必要になる。趣味を生かすにしても、趣味のバラエティを増やしておかなければ、ニーズの変化に対応できない。

  年齢に対する差別を禁止したAge Discrimination 法を持つアメリカの経験では、この法律によって高齢の大学教授がなかなか退任せず若い人の教授昇進がさまたげられ、大学の変化対応能力に問題がでた。専門性と社会的なニーズとの整合性は、75歳まで働く場合、大きなテーマになりうるのだ。

次回は専門性とニーズの関係を頭に置きながら、企業の準備しなければいけないことについて考えてみよう。

 

つづく

 

 
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