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コーヒーブレーク(51)

 
「働き方改革」とチームビルディングVI 縦の分業の効率化

組織の階層を作る理由も「便利かどうか」

  組織構造は、横の分業である職能別組織だけでなく、縦の分業である職位の階層によっても左右される。職位の階層は何を分業しているかというと、「物事を決定する範囲」で、区分原理は、やはり、「分けた方が便利かどうか」である。一人で全てを決められるのであれば、分業は必要がない。しかし、業務が複雑になり、決めなければいけないことが多くなれば、重要な部分のみ自分で判断し、その他は他の人に任せるほうが便利である。

   問題は、「何を任せるか」だが、例えば、部長は、社長の指示を実行するためには何をすればよいか(What)を考え、どうやるか(How)を課長に指示する。課長は部長の指示を実行するには何をすればよいか(What)を考え、主任に指示する。このようにWhat とHow の連鎖によって階層はつくられるが、階層が増えれば、手続きも増え、便利度は低下する。

 

分ければ離れる、分ければ固まる、慣性あり

  職位階層も分業なので、分業が持つ特徴点は免れない。職位が異なれば、考え方、感じ方も違ってくる。課長クラスは人を使って結果を出すのが仕事だが、部長となれば、それだけでは十分でなく、職能分野でビジネスに貢献する結果を出すことが求められる。

当然、職位間に壁ができる。この壁を超えるためには、上下の意思疎通が重要で、部長は「自分は何をしたいか、部下には何をしてほしいか」を普段から明確にしておく必要がある。課長も「自分がなにを実行しようとしているか、部長にしてほしいと思うことは何か」をはっきりと伝えておく必要がある。階層が多いと越えなければいけない壁の数が増加し、便利さは少なくなる。階層が少なければ、壁は少ないが、決定しなければいけないことの範囲が増加するので、能率は下がる。

  また職位階層も組織なので慣性を持つ。ひとたび課長といったポストができると、そのポストが仕事や環境の変化で必要がなくなっても、引き続き任用が行われるというケースが発生するし、二つのポストを一つに統合しようとすると抵抗が起きる。階層は多すぎても、少なすぎても効率は低下する。それゆえ職能組織の場合と同様、階層があった方が便利かどうか常に原則に戻って考えることが求められる。

 

インセンティブとコーディネーション

  階層も、上手に使うためには、インセンティブとコーディネーション問題に配慮する必要がある。例えば情報の伝え方で、直接の上長以外にどのように伝達するかをルーティンとして定めておかなければいけない。「上位上長のみに報告、他の組織に伝達するかどうかは上長が判断する」という情報と、「関連部署には伝達しておいた方が後々便利思われる場合は、自分の判断で伝えて良い」情報の区分の明示などがそれである。情報を流すことにより 相手からも良い情報を得られる。相手が必要とする情報を流すことは、こちらが入手したい情報を入手しやすくするインセンティブとなるからだ。

  組織階層がそれぞれ権威を持つのは、決定権限にもよるが、入手できる情報に制限がある結果でもある。役員クラスが入手できる情報と、課長クラスが入手できる情報には、当然、差がある。それはこれまでの経験によって培われたルーティンによるものだが、それでよいかは、適宜見直されなければならない。

また、上司は、部下の協力を引き出すためには、どこまで自分の持っている情報を公開するべきかを常に考える必要がある。チームビルディングの基本の一つに、目標の共有化があるが、縦の分業の場合は、What の共有化がそれに相当する。また、How どのように実行するかを考える時には、自分のもっている情報と部下の持っている情報とのすり合わせが必要になる。特定の専門分野に関しては、部下の情報量の方が大きいことが普通だからだ。

 

フラットな組織だとどうなるか

  では、組織階層をなくしてしまった場合は、どうなるかである。What とHow を一人で考えなければいけないので、必要な情報を自分で入手しなければならないし、結果を誰に伝達するかも、自分で決めなければいけない。

  情報の流れを自由にすると情報の集まる人とそうでない人が分かれてくる。ネットワークが形成され、人により集まる情報にも特徴がでてくる。こういう問題はあの人に聞くのが良いとか、必要な時にあの人の協力が得たいので情報を流しておこうと言った意図の反映である。重要な情報を持っていない人には情報は集まらない。自然とネットワークに結節点が生まれ、階層の肩代わりをするようになる。

  だが、上記は構成メンバーがそれぞれ自律した専門家で構成されていないとうまく機能しない。フラットな組織は自律分散型として理想形の一つのように言われることがあるが運営は易しくない。分業は欠点も持つが、効率の面でその威力は大きいと言わざるをえない。

 

つづく

 
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