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3Dラーニング・アソシエイツ

コーヒーブレーク(52)

 
「働き方改革」とチームビルディングVII 個々人の能力向上

適材適所伝説

  働き方改革には、組織の効率向上と、組織を構成する個人個人の作業効率向上の両方が必要である。個人の効率向上には「各人の能力に適した仕事を割り当てる必要がある」という意見が有力である。能力以上の仕事を割り当てられたのでは、効率が上がらないし、能力以下の仕事を割り当てられたのでは、能力の無駄遣いになってしまう。

理屈は誠にその通りだが、実行はかなり難しい。仕事はそう都合よく流れてこないし、仕事の難しさや個人の能力の判定も簡単ではないからだ。それゆえ、適材適所に拘らない、もっと別な考え方が必要になる。その一つが(コーヒーブレーク46)で述べた、組織内一人親方(その見習いを含む)の集団に仕事を任せる方法だ。

 

後から決まる適材適所

  前工程と後工程の内容を理解しその上で自分をコントロールできる者(一人親方レベル1※)と、自分と他人をマネージしてアウトプットを出す者(レベル2※)で構成するチームを創れば、効率は自ずと向上する。結果に責任を負うことが原則である一人親方であれば、働き方を任せても問題が起きにくい。自分でやり方をいろいろ工夫するからだ。「各人が自分らしいやり方でアウトプットを出せるようになった時が、適材適所が成立した時」という考え方である。

もちろんレベル2(課長クラス)の者は、「チームの目標、自分は何をしたいか、各人に期待することはなにか」を明示し、メンバーの能力向上を支援しなければならないが、それが出来てレベル2である。

※一人親方のレベルについては「マネージする対象から見る親方度レベル」(別ウィンドウにて表示)を参照。詳しくは、拙著「キャリア戦略」4章に説明あり。

 

能力の向上に必要なこと

  では、個人の「能力向上」とは具体的にどんなことを指すのであろうか。いろいろあるが、関島の定義は、「自分で判断実行できることの範囲が広がること」である。「判断できる」だけでは不十分で、「実行できる」が大切だ。では、能力の向上にはどんな支援が必要だろうか。

  能力は知識と意欲の関数である。従来のHRMの考え方によれば、能力の向上には「知識・技能を高める」が第一で、意欲の向上のために、昇給や賞与、昇進制度があり、支援策として公平な評価と、安心安全のための福利厚生・安全対策などを整備するという関係なる。しかし、自分で判断・実行できる範囲を広げようとすれば、従来の行動様式を変える必要が出てくる。

行動様式を変えるためには、知識を得る、心が動く、習ったことを使う、の三つの局面の経過(3ディメンジョナル・ラーニング)が不可欠になる。先に意欲向上策として挙げた給与や賞与、福利厚生の水準は市場レベルであれば良い。市場以上に優遇しても効果は薄く、市場の水準を下回るようだと圧倒的に不利になるというのが経験則だからだ。それより必要と考えるのは、周りの期待と鍛える仕事である。あいつはダメだとか意欲に乏しいと決めつけない姿勢が、この二つが機能する前提となるのは言うまでもない。

 

目標がはっきりしなくても大丈夫

  但し、周りの期待も訓練も、個人が自分自身の能力向上に力を注ぎたい、自分で成長したいと思わない限り効果がない。やはり目標が必要で、目標設定のためには「何をしたいか、好きなことは何か」」が自分で分かっていなければならない。しかし、自分自身のことはなかなか分からないのが普通である。それゆえ、したいことが分からなくても心配しなくて良い。仕事をしているうちに徐々に目標がはっきりしてくれば良いのだ。ただし、「部長や役員になりたい」とか「グローバル人材になって世界で活躍したい」などでは、目標となりにくい。努力しても報われないケースがしばしば、というのがグローバル競争時代の冷厳な事実だ。

何になりたいかではなく、何をするか、をキャリア目標とすべきである。特に75歳まで働くことが必要になる年代の人(現在の課長さん以下の人)は、一つのキャリアで生き抜くことは、とても難しい。(コーヒーブレーク 38〜42長寿命化とキャリア戦略 参照)勤務期間が長いということは、それだけ多くの変化に直面するということである。キャリア目標を考える上では、今後どの様な人材が必要になるかといったニーズの面からの考慮(外部コンテキストの分析)や自分が持っている能力(今後獲得する能力も含む)の分析(内部コンテキストの分析)を行ったうえで目標を設定するという戦略的アプローチを心がけた方がよい。

 

つづく

 
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