チームビルディングの技術は、困難な目標を達成できるチームを作る技術である。困難な目標とは、一人では達成することが難しく、多数の人の力を借りる必要があるだけでなく、ときに一人一人の力の合計以上の力をださないと達成が難しい目標のことである。このような目標の達成のためには、集められたメンバーの全員が本気にならなければならない。従って、チームビルディングの技術とは、別な表現をすれば、みんなを本気にさせる技術のことである。しかし、人は、簡単には本気にならない。だから、チームビルディングの技術も単純ではない。
そもそも、チームという言葉は乱用されている。野球のチーム、サッカーのチームもあれば、会社、あるいは会社の一部である部や課といった組織を、チームとみなす場合もある。一定の目的のために集まって何かをしていれば、すべてチームとよばれかねない。しかし、チームとは本来、難しい問題を、限られた期間の間に解決するために、専門的な知識や技能を持った人が集められた臨時の組織のことである。
日本人は集団主義なのでチームで活動するのが得意だとか、チームワークをとるのが上手だとか、一般的には思われている。しかし、最近の職場の状況や研修の際のグループ討議の様子を詳しく観察すると、とてもそうとは思えない。日本のチームワークの良さとは、仲良く物事を進めることに重点があり、新しいものをつくり出すチームワークではない。対立を避けようとする傾向が強いことと、自分の意見を上手に説明する訓練が不足していることが原因で、対話が進んでいるようにみえて、実際はなにも進んでいない。そのためチームとしての意思決定があいまいなまま議論が進行し、後になって意見の違いが表面化したり、表面的にしか合意の取れていない結論がでてしまったりする。チームワークがとれるのは長く付き合った人と活動するときだけで、考え方の異なるメンバーと一緒に仕事をするのは、本当は得意ではないのではないかと思える。
困難な目標を達成するためには、チームワークを梃子に使って一人一人の力の合計以上の力を発揮することが求められる。しかし、対立を怖がって、各人が自分の意見をはっきりいわなければ、酸素と水素がぶつかって水ができるような変化は生まれない。足りない点を補い合うだけでなく、お互いが刺激しあった結果、一段うえの力量に達するという成長も起こらない。