ホーム  
3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.3  概ねの方向を決める手がかり(2) グローバリゼーション3.0
 

バージョン1.0 国の時代

  競争の場が世界中に広がった状況を、最近のビジネス書のベストセラーThe World is Flatは、グローバリゼーション バージョン3.0と表現している。この本の場合は、コロンブスの時代から1800年ごろまでをバージョン1.0、2000年までを2.0と、極めて長期的視点で分類しているが、ここでは戦後の、日本の経験を土台にグローバリゼーションの進展の様子を、働く場所という視点から捉えてみたい。
  戦後の日本企業が最初に国際舞台を経験したのは、輸出業務からであった。初めは商社が中心であったが、製造業も次第に輸出先に駐在事務所を置くようになり、世界中に営業マンが駐在員という形で派遣されるようになった。
しかし各国とも、関税や輸入割当制、ローカルコンテンツ法などにより輸入量をコントロールしていて、国家間の物の流れは制限されていた。国家がグローバリゼーションの規模を規定したといえる。
イメージ
  このため、個人が勝手に働く国を選ぶことはできず、人の移動も国が決めた。労働力不足を補うため、どのくらい移民を受け入れるかなどは、労働可能なビザの発行枚数でコントロールした。国が働く場所の決定に大きな力を持っていた時代が、70年代以前のグローバリゼーション1.0である。
 

バージョン2.0 企業の時代

  やがて、企業が現地生産を選択するようになる。市場の一定規模を確保できた場合は、市場に近いところで製造する方が、日本から製品を送りこむよりコスト面で有利だからだ。現地の需要動向を素早く反映する上でも現地で生産するほうがよい。現地の部品メーカーを指導して品質を改善し、その製品が使えるようになればローカルコンテンツ法の制限もこえることができる。
イメージ
  現地生産も初めの意図は、それほど戦略的とは言えなかったが、現地で製造した製品をその国の中で販売するだけでなく、その周辺国に輸出するようになると、どこで、何を、どの市場向けに作るかを考える必要がでてくる。
90年代以降の競争の激化は、世界中の市場をにらんだ上での最適な場所での生産や、最適な場所でのR&Dという考え方を要求するようになる。
 競争に勝つためにはグローバルな価値観とローカルな価値観の両方の追求が必要になる。企業によるグローバリゼーションの時代である。これがバージョン2.0。この時代は、どこで事業をするか企業が決め、その結果、人が移動した。働く場所は企業が決めたと言える。現在でも人の受け入れ規模を国が決めるという要素は残っているが、そこに企業が決める部分が加わったのである。
 

バージョン3.0 個人が働く場所を選択する時代

2000年以降になると個人が、働く国や地域を選ぶようになる。もともとスポーツ選手や芸術家はそのような選択をしてきたが、これがプロフェッショナルと呼ばれる専門家や、高度な仕事の機会を求める高学歴女性に広がった。日本よりは実力が発揮できるからと、香港やシンガポールを働く場所に選ぶ日本女性は、珍しくなくなった。国も、例えば米国は、ソフトの技術者や医師、看護士の受け入れ枠を拡大した。
多くの場合、人はより高い収入を目指して異動したが、最近ではキャリア形成に役に立つのであれば、給与が日本より安くてもかまわないと言う現象も生まれている。大連(中国)のコールセンターで働く日本人は、給与は安くても生活費も安いので十分やっていけるし、中国語も学習できると考えている。
イメージ
個人が働く場所を選択するといっても、地理的に移動しなくても良い場合もある。インターネットの普及がそれを可能にした。昔はインドのソフト技術者はシリコンバレーを目指したが、現在はインドにいたままアメリカにいるのと同様に仕事が出来る。個人が働く場所を選べるようになったのは、企業が経営資源の効率的組み合わせで競争に勝とうと、ワールドワイドなサプライチェーンを構築したり、アウトソーシングと呼ばれる業務の外部委託やオフショワリングとよばれる海外移転を本格化したりしたことが原因である。
 その結果、従来であれば、先進国の国内にとどまったはずの仕事が国外に流出し、多くの雇用機会とビジネス・チャンスが世界中に生まれた。グローバリゼーション3.0は、個人が自分で働く国や地域を選ぶ時代である。競争の場が世界中に広がったことにより、会社も仕事の場所を選ぶが、個人も働く場所を選ぶようになる。このことを前提に人材マネジメントを考える必要がある。
前のコラムへ バックナンバー一覧 次のコラムへ

「21世紀型人材マネジメント―組織内一人親方に好ましい生態系の創り方―」をテーマに、これからも関島康雄のコラムを掲載していきますのでご期待ください。また、このコラムに関するご意見・ご感想もお待ちしております。
※ ご意見・ご感想はメールにてお寄せください。メールアドレスは連絡先のページを参照願います。
Copyright since 2006  3DLearningAssociates All Rights Reserved.