ホーム  
3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.9  HRMの創り方(3) 施策の束の作り方 

人的資源の効率=個人の効率×集団の効率

 経営の三要素は人、物、金、といわれるが、HRMの目的は、「人的資源に関する効率を上げて、経営に貢献すること」と長らく考えられてきた。個人の効率は、個人の能力(A)と意欲(B)に分解できるので、集団の効率を(C)とすれば、AとBとCの積が人的資源の効率をあらわす算式となる。

 いろいろな人事勤労上の施策はこれらA,B,Cのどれかに働きかけるものと考えられる。例えば、Aに働きかける施策は、採用、教育、配置などであり、Bに働きかけるのは、昇給や昇格などの処遇や安全衛生など、Cに関係するのは組織の作り方や集団への帰属意識である。
問題は、A,B,Cがそれぞれ独立的に設計され、全体としての効果があまり配慮されなかったことである。しかし、競争が激しくHRMが経営全体に貢献することが求められる時代には、それでは対応が不足である。

 

施策の束(bundle)という考え方

 HRMの施策全体で一定の効果を狙うために考え出された方策が、「施策の束」という考え方である。例えば、「良い従業員を集める」というHRMにとって基本的な機能をとってみても、色々なやり方がありうる。

 入社試験は易しくもなく、さりとて厳選という程でもない普通の難しさで、入社後の選別は時間をかけてゆっくりおこない、給与水準は市場の平均、企業文化はチームワーク重視型という組み合わせ(典型的日本企業)や、入社時のチェックは、「この仕事ができますか」という程度でそれほど難しくはないが、やらせてみて出来なければ3ヶ月もしないのにクビという意味で、入社後の選抜は厳しく、給与は仕事別賃金で、個人評価を重視という施策の組み合わせ(典型的アメリカ企業)が可能である。

 この組み合わせによる効果に着目したのが、施策の束という考え方である。HRMの諸施策を、採用、入社後の選抜、給与水準、企業文化というようにいくつかの山にわけ、その山のなかから、一つずつ施策を取り出して施策の束を作り、束全体でビジネス・モデルを効果的に支援しようというものだ。それぞれの組み合わせ方に、国の教育制度や労働法規が影響するが、基本的にはビジネス・モデルごとに組み合わせ方は異なってくる。常用労働者を多く使う事業と、パートやアルバイトをたくさん使う事業では、施策の束の作り方が異なってくるのは当然である。

 

束を作るとき考慮すべきこと

 施策の束を作る時に考えなければいけないのは、外部環境にたいする適合性と、自分の持つ内部資源にたいする適合性である。
外部環境にたいする適合性とは、例えばその国の教育制度にたいする施策の当てはまり具合などである。卒業生にたいする品質管理があり大学卒といえば一定の能力を期待できる国と、品質管理がなく大学卒と言ってもその能力にバラツキが多い国とでは、とりうる施策に違いが出てくる。前者の事例はフランスだが、入社試験は学歴だけでなく学校間格差も考慮されるので、ある意味で厳しい。
 しかし、入社後は、学歴の信頼性が高いので、あまり厳しいスクリーニングは必要とせず、1年以上たってから業績により選抜をすればよい。日本も従来は、品質管理が大学別にあり、ある程度フランス型の採用が可能であった。しかし大学全入制に近い時代になり、入学試験が形骸化すれば、入社後3ヶ月程度でどんどんスクリーニングすることが必要になってこよう。
 自分が持つ内部資源(リソース)との適合とは、例えば、社内に人を育てる仕掛けや仕事を教える人材が十分に存在しない場合、内部からの昇格中心の処遇制度をつくっても機能しないという事例をあげれば十分であろう。内部資源の質、量を考慮のうえ、採用政策や教育投資のあり方を検討するのが当然である。

 

前のコラムへ バックナンバー一覧 次のコラムへ

「21世紀型人材マネジメント―組織内一人親方に好ましい生態系の創り方―」をテーマに、これからも関島康雄のコラムを掲載していきますのでご期待ください。また、このコラムに関するご意見・ご感想もお待ちしております。
※ご意見・ご感想はメールにてお寄せください。メールアドレスは連絡先のページを参照願います。

Copyright since 2006  3DLearningAssociates All Rights Reserved.