HRMの施策全体で一定の効果を狙うために考え出された方策が、「施策の束」という考え方である。例えば、「良い従業員を集める」というHRMにとって基本的な機能をとってみても、色々なやり方がありうる。
入社試験は易しくもなく、さりとて厳選という程でもない普通の難しさで、入社後の選別は時間をかけてゆっくりおこない、給与水準は市場の平均、企業文化はチームワーク重視型という組み合わせ(典型的日本企業)や、入社時のチェックは、「この仕事ができますか」という程度でそれほど難しくはないが、やらせてみて出来なければ3ヶ月もしないのにクビという意味で、入社後の選抜は厳しく、給与は仕事別賃金で、個人評価を重視という施策の組み合わせ(典型的アメリカ企業)が可能である。
この組み合わせによる効果に着目したのが、施策の束という考え方である。HRMの諸施策を、採用、入社後の選抜、給与水準、企業文化というようにいくつかの山にわけ、その山のなかから、一つずつ施策を取り出して施策の束を作り、束全体でビジネス・モデルを効果的に支援しようというものだ。それぞれの組み合わせ方に、国の教育制度や労働法規が影響するが、基本的にはビジネス・モデルごとに組み合わせ方は異なってくる。常用労働者を多く使う事業と、パートやアルバイトをたくさん使う事業では、施策の束の作り方が異なってくるのは当然である。