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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.11  人材の特定(1)わが社は、こういう人が好き 

ビジョン、ミッション、好き嫌い

 ビジョンを達成するためにしなければいけないこと、それをミッションとここでは定義しよう。「人材開発で社会に貢献するために、ワールドクラスと認められる存在となる」というビジョンの場合、これだけではやるべきことがハッキリしない。ミッションは、「グローバルな環境下でリーダーシップを発揮できる経営者の育成」であるとなれば、やるべきことは具体化してくる。ミッションを実行する力量のある人を集めればよい。ただし、ビジョンやミッションを明示して、「この指とまれ」と参加希望者を集めたとしても、希望する人なら誰でも良いというわけではない。やはり組織にとっての好き嫌いは存在する。 好き嫌いの発生の原因は、本来的には、企業が選んだビジネス・モデルに由来する。

ビジネス・モデルは、ビジネスの対象となるお客さん、お客さんに提供する価値、競争に勝つために選んだ戦略、の三つにより決まってくる。それゆえ、お客さんとの相性の良いタイプの従業員が好ましいし、事業戦略を実行するのに必要な人材が好ましい、ということになる。歴史が長い組織の場合は、上記に加えて、組織が持つ文化に合う人が好ましいと考える傾向が生まれる。
 

組織学習の結果としての文化

 組織にとって文化が大切な理由は、文化には過去の経験から生まれた知恵がたくさん含まれているからだが、理由はそれだけではない。文化は簡単にマネすることが難しいのだ。HRMの個々のやり方、例えば採用の方法や処遇制度などは、マネすることは、実は、それほど難しくはない。コンサルタントを雇って、良い方法を教えてもらうことも出来るし、企業間でお互いに方法を公開しあいよりよい方法を見つけ出す、ベンチマークという手法も採用可能である。

しかし、採用した施策の束全体となると、全体として狙うものがビジネス・モデルによって異なるので、同じ組み合わせは見つけにくい。まして、施策の束が時間をかけて創りだした「組織学習の結果としての企業文化」は、直ぐにはマネすることは出来ない。外部環境が大きく変化したりして、ビジネス・モデルを変更しなければならない時は、当然、企業文化を変更するという作業が必要になるのだが、長年にわたって学んだことを放棄することは簡単に出来ない。歴史が長い企業のビジネス・モデルの変更が簡単ではないのはこのためである。

好き嫌いと効率の関係

 組織は、好き嫌いを明示することにより効率を高めることが出来る。例えば、大学の例をあげれば、慶應カラーとか早稲田カラーといわれるものがあるが、多くの場合、慶應大学が好きな人は、慶應カラーという雰囲気が好きである。大学もカラーに合う人に来て欲しいと考える。カラーが学生の選別に一定の役割を果たしている。同様に、採用に当たって予め、当社はこういう人が好きだと明示されていれば、その基準に合致しない人は、採用試験を受けにこないので、会社は余計な面接の手間を省くことが出来る。個人にとっても、組織の好き嫌いが明示されていれば、入社後自分に合わない文化への適応を迫られるという望ましくない事態を避けることが出来る。
 

評価要素と好き嫌い

 個人の業績評価に当たっても、当社はこういう方法で仕事をしてもらうのが好きだという基準が明示されれば、評価はより正確になる。業績を上げる方法はいろいろある。責任権限を細かく分けて実行し業績をあげることもできるし、自由放任で好き勝手にやらせて業績を上げることも出来る。問題は、どちらの方法を会社は好ましいと考えるかである。

 官僚的なことを嫌いと考える会社の場合、官僚的な方法で業績をあげる人を高く評価するわけにはいかない。会社の好まない方法を奨励することになるからだ。業績を評価する物差しと会社が好む方法を測る物差しが、評価要素のなかに混在するケースがしばしば見られるが、本当は両者を区分し、その上で個人の業績を評価すべきである。
 
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