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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.12  人材の特定(2)「仕事は大変だが面白い」が分かる人が好き 

戦略不在は変わったか

 コラムvol.4で、「80年代、日本企業が日本企業である理由はハッキリしていたが、個々の企業が、自分が自分である理由はあまりハッキリしていなかった。それでも競争に勝つことができたために、90年代以降、苦戦を強いられるようになった」と書いた。これをもう少し丁寧に言うと、日本企業である理由とは、価格と品質に競争力の源泉があるという意味で、自分が自分である理由とは、自社の特徴点から選択した戦略の存在のことである。日本企業は、どの企業も価格と品質で競争したので、よく言えば戦略が同質、悪く言えば戦略不在であったということである。そのため90年代以降、勝ちにくくなったのだが、戦略不在の体質は、これまでに改善されたのであろうか。

そのようには思えない。最近になり企業業績は改善が見られるようになったが、これは中国やインド、ロシアなどの成長が、日本の製品にたいする新しい需要を生み出しているからで、新しい戦略が採用されたためではない。あいかわらず日本企業は価格と品質で闘っている印象が強い。

 

インド、中国にどう対応するか

 世界中が市場で、世界中に競争相手がいるグローバリゼーションの時代は、競争条件の変化が激しい。この場合、戦略設定の前提条件をどう認識しているかが、変化に対する反応速度を速めるカギとなる。「外部環境をこのように判断したのでこういう選択をした」と明確に整理されていれば、外部環境が変化したとき、どう戦略を修正したら良いかが分かりやすい。「自分の強みはこの点にあると考えた」と自己認識の内容が整理されていれば、外部環境の変化で、強みが弱みに転じたとしても、直ぐに気がつく。日本企業の競争の仕方が変わりにくいのは、自分の特性が、価格と品質で競争する製造業に向いていると認識しているからではないかと思うが、では、外部環境をどう認識しているのだろうか。

アメリカや日本などの先進国が抱える中長期的課題は、インド、中国の成長にどう対応するかである。なぜなら、対策を何も採らなければ、どうしても仕事がインド、中国に流れがちになるからである。学歴が高く低賃金でかつ働く意欲が高い従業員が利用できる魅力は、企業にとって抗しがたい。さらには、10年もすればインド、中国の製造業も有力な競争相手に育ってくる。
日本企業は、現在のところインドや中国の市場が成長する恩恵を受けているので、この辺の認識があいまいになっているきらいがある。金融業やサービス産業の発達したアメリカよりは、なかなか製造業主力から抜け出せない日本の方が、インドや中国の成長の影響を強く受ける。
それ故本当は、日本の方がこの問題に真剣に取り組まなければならないはずであるのに、アメリカの方が考えているのではないか。(バックナンバーの「米国人材マネジメント協会年次大会報告」参照)

日本が引き継ぐべきDNA

 アメリカは、現在と同じ水準の生活をするチャンスを今の子供達に残すためには、アメリカのDNAである「開放性とそれに伴うダイナミズム」を是非とも企業の壁をこえて維持すべき、と考えているようだ。では日本の場合、アメリカの「開放性とそれに伴うダイナミズム」に相当するものはなにか。それは「仕事は大変だが面白い」ではなかろうか。働くことを苦役と考えず仕事と捕らえたのは日本の特徴である。これがあったので、日本型経営と呼ばれるような自分らしい方法を生み出し、80年代、戦略不在でも世界と競争することが出来た。
日本は、インド、中国に対抗していくためには、もう一度自分らしい競争の仕方を発明しなければならない。「仕事は大変だが面白い」という特性があれば、工夫を積み重ねて、単なる製造業ではない製造業や、ジャパニーズ・クールとよばれる魅力の延長線上の商品を生み出すことも出来る。どうしてもこのDNAを、次の世代に引き継ぐ必要がある。これは、企業の仕事である。
 

選ばれる会社

 21世紀は、自律したプロ人材、一人親方の質,量を争う時代である。個人が働く場所を選択する時代でもある。企業が人材を選ぶのは勿論だが、企業も人材に選ばれる。選ばれるためには、会社は一人親方に好まれる企業文化を持たなければならない。ビジネス・モデルごとに施策の束の作りかたは異なる。しかし、施策の束が創りだす企業文化は、一人親方が好きな「仕事は大変だが面白い」という色彩が色濃い必要がある。その上で、会社は、「仕事は大変だが面白い」が分かる人が好きと宣言すべきなのである。
 
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