コラムvol.4で、「80年代、日本企業が日本企業である理由はハッキリしていたが、個々の企業が、自分が自分である理由はあまりハッキリしていなかった。それでも競争に勝つことができたために、90年代以降、苦戦を強いられるようになった」と書いた。これをもう少し丁寧に言うと、日本企業である理由とは、価格と品質に競争力の源泉があるという意味で、自分が自分である理由とは、自社の特徴点から選択した戦略の存在のことである。日本企業は、どの企業も価格と品質で競争したので、よく言えば戦略が同質、悪く言えば戦略不在であったということである。そのため90年代以降、勝ちにくくなったのだが、戦略不在の体質は、これまでに改善されたのであろうか。
そのようには思えない。最近になり企業業績は改善が見られるようになったが、これは中国やインド、ロシアなどの成長が、日本の製品にたいする新しい需要を生み出しているからで、新しい戦略が採用されたためではない。あいかわらず日本企業は価格と品質で闘っている印象が強い。