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21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.14  処遇(1)水準は誰と誰が決めるのか

処遇という部品の山

 一人親方が好む生態系を創るのに必要な部品の山の一つとして、「人材の特定に関係する山」について考え、それが、柔軟な処遇制度を要求することが分かった。そこで次に、「処遇制度という部品の山」について考えてみよう。従来の定義で言えば、給与、インセンティブ、福利制度などと呼ばれる分野である。この山に関する最も基本的な質問は、「処遇の水準は誰と誰の間で決めるのか」である。

答えは三つある。一つは、給与などの処遇は専門性にたいする価格であるので、需要・供給の関係から「市場が決定する」というもの。二つ目は、市場の影響は受けるが基本的には「当事者間の交渉で決まる」。三つ目は、市場とか交渉とかに任せぱなしにすると問題が起こるので、「法律で決める」である。以下順番にその内容について検討してみよう。
 

市場が決定する

 市場が処遇の水準を決定するケースはいくつかある。典型的事例は、需給関係が逼迫している場合である。ある仕事に対する需要が多く供給が不足している場合、給与水準の市場価格は上昇し、それ以下の給与では採用が難しくなる。この場合でも当事者間で賃金の水準について交渉はおこなわれるから、市場の水準以上に交渉で決まるともいえるが、働く場所の選択権は求職側にあるので、決定は一方的であり交渉とは看做しがたい。

 もう一つの事例は、学校を出たての新人を採用するケースである。日本の場合、大部分は職種別の採用ではないので、影響力を強く持つのは、産業別の学歴別給与水準という市場価格である。企業別の支払能力に差があるので、同じ金額にはならないが上下の差はそれほど大きくなく、この幅より高い給与で、あるいは低い水準で採用することはまれである。景気の動向により採用数は変動するので、当然のことながら、その変化は、その年の初任給水準に反映する。働く場の決定については、就職、採用ということで当事者双方に決定権があるが、給与の水準についての決定権は市場にあると言える。
 

当事者間の交渉で決まる

 能力が高い専門職の場合は、雇う人、雇われる人の間の交渉で決まる。例えば、個人事業主であるプロ野球の選手は、球団と個別に年棒など契約条件について話し合う。アメリカの大リーグのように、選手側が代理人を立てたとしても、当事者間の交渉であることには変わりがない。
 歴史的には、個人の力は会社といった組織のそれに比べ小さいので、個人の側が集団を作って力のバランスをとろうとしたものが労働組合である。組合は個人に代わって、処遇水準の交渉に当たる。組合はいわば個人の代理人であり、組合と会社が賃上げや賞与について交渉するのは、これも広い意味での当事者間の交渉と看做すことが出来る。組合員個人個人に対する配分は、それぞれの会社や組合によってルールが異なるが、それは水準が決定した後の話である。
 

法律で決める。

 雇う人と雇われる人の力をバランスさせようとしても、雇われる立場の人が集団を作ることが難しい子供や未熟練労働者の場合、何もしなければ、とても安い水準に決まってしまう。それでは社会的に問題なので、この年齢以下の人は雇ってはいけないとか、最低でもこの水準の賃金を払うべしなどと法律で決められる。社会的公正に関連することは、当事者間の交渉にまかせるのではなく、法律によって決められることが多いのである。
 
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