実は人材開発のために必要なビジョンにもう一つ織り込むべきことがある。それは、「人材のポートフォリオ」という考え方である。ポートフォリオを組むとは、そもそもは、リスク回避のために資産に占める金融商品などの構成を検討することだが、この考え方は従業員の構成を考えるときに応用された。作業量の変動に対応できるよう常用労働者と非常用労働者(短期の労働者やパートタイマー、アルバイトなど)の比率をどうするか、という時「人材のポートフォリオ」という言葉が使われた。
しかし、私が使う「人材ポートフォリオ」とは、「現在必要な人材と将来必要な人材の比率をどのようにするか、という視点から人材の育成を考えることにより、将来発生する必要な人材と、現在保有する人材との不一致というリスク対策としよう」という主張である。理由は、ビジネスモデルで闘う世界では、ビジネスモデルの変更は常だが、将来必要な人材はどういう人か現在は分からないが、分からないということで対策を放棄してしまっては、リソース配分の俊敏性を争う世界では、競争に負けてしまう。どうしてもこの点についての考え方を整理しておく必要がある。