このようなビジネスモデルの場合、HRMが出来ることは、従業員の採用に当たって、「顧客が気持ちよく接触できる雰囲気をもった人を選ぶ」といったことであろう。フライトアテンダントは、てきぱきとスケジュールの変更に応じたり、レンタカーの手配をしたり、乗り継ぎ情報が提供できたりしなければならない。それゆえ、接客が得意な人というよりは、どちらかというと有能な秘書に近い人が望ましいということになる。教育訓練の内容も、通常のフライトアテンダントの業務に加え、「現代のビジネスパーソンが求められていることは何か」といった、顧客のビジネスの内容理解が必須項目とする必要がある。
従って、採用や教育訓練の目標は、単に「組織が必要とする能力の確保」にとどまらず、「顧客と共通な文化の確保」を、その視野に入れなければならない。技術を大切にする会社が顧客であれば、そこにセールスに行く営業マンは、技術のことが良く分からなければ受け入れられない。多目的スポーツビークルを販売する会社には、アウトドアスポーツが好きな人がたくさんいなければ、「渓流釣りにはどんな車がよいか」といったたぐいの質問に答えることはできない。HRMが自社のビジネスモデルについて十分理解していることが求められる理由の一つが、「顧客に対する貢献」にある。