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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.27  人材開発(6)キャリア開発

キャリア開発の分岐点

 キャリアを考える上で非常に大きな分岐点となるのは、自分だけでなく他人もマネージしなければならない地位に就いたときである。「仕事が人を育てる」という視点からみれば、主任、課長というようなポストに就く前から人をマネージする能力が十分にあるというケースはまれである。ポストに就いてから苦労しながら人をマネージする方法を学んでいくのが普通である。

なぜ苦労するかといえば、先任者あるいは先輩として他人を指導する場合と、組織の長として部下を指導する場合とでは、結果に対する責任が大きく異なるからである。
前者の場合はどちらかというと助言の色彩が強く、結果が悪くてもそれは助言のせいではなく本人のせいである。しかし後者の場合は、結果が悪ければ、本人のせいだけでなく仕事を指示した人のせいでもある。
 他人をマネージし結果を出すためには、いろいろなことに対する価値観を、これまでのものと変更する必要がでてくる。自分の時間の配分やコミュニケーションの方法などが、その典型である。少し難しく言えば、他人の感情にセンシティブであることや組織が置かれた状況の認識などに代表される社会性といわれる能力、自分の意見に賛成してもらえるよう人に働きかけることや利害の調整をおこなうことに代表される関係性管理能力が問われるようになってくる。
 

スーパーセールスマンあるいはノーベル賞という選択

 自分だけでなく他人もマネージするという仕事がキャリア上の大きな分岐点である理由は、ここで、自分は何が面白いと感じるか等の「自分らしさ」が大きく影響してくるためである。

「部下の管理や指導という仕事は自分には合わない。それよりは自分の専門性をもっと突き詰めたい」と考える人がそうである。例えば、営業としてあれこれ自分で工夫して、注文をとることが面白くて仕方がない。難しいとされる顧客に買ってもらったときの快感がたまらない。この仕事に専念したいという人である。

日本の仕掛けは、管理職にならないと給与が高くならないという傾向が強いが、それだけでは、上手くいかない。スーパーセールスマンとして処遇する仕掛けが必要である。研究者にも、特定の分野で多くの成果を上げていて、さらに深く研究したいので管理職は勘弁して欲しいとか、会社の決めた研究テーマではなく自分が面白いと思うテーマを追求したいということで大学に転職するとかのケースが出てくるのがこの時期である。それぞれ、自分らしさに基づく選択であるが、優れた研究者を引きとめようと思えば、研究職としての処遇システムが必要になる。
多くの場合は、そこまでは自分についての意見が定まっていないので、とりあえずポストに就いてしまう。そして、人をマネージするというテーマの重さに気がつき、何故上手くいかないかを考えるうちに、自分自身を見直すことになる。
 

移行期間は長く設定

 個人のキャリア追及と組織の目的という時に相反する目標を同時に追求するのが正しい、という考え方にたつ21C型人材マネジメントの場合、考え方は以下である。

1)生涯一捕手(と言いながら監督をして1500勝した人もいるが)というタイプの選択を認めるので、主任・課長というポストに就く前、就いた後、できれば次のレベル(すなわち自分、他人、ビジネスあるいは専門分野の三つをマネージすることが要求される)の仕事に就く前までの三つのポイントで自分を振り返り、どうするか決めて欲しい。

2)自分らしいことが分かるまでに時間がかかる人もいるので相対的に選択の期間は長く取るから、良く考えて欲しい。ただし、他人をマネージする仕事が上手くいかなくて、他人のキャリア追求に害を与える場合は、速やかにポストからはずすのでそのつもりでいて欲しい。

3)他人をマネージする方法の習得の支援はおこなう。
 

自分らしさによる選択

 キャリアの選択は「自分らしさ」によっておこなわれる。正確な自己認識、すなわち強み弱みや好き嫌いの理解、それに伴う自分を対象化できる能力などが備わっている必要がある。専門志向の選択をおこなったとしても、自律性(自己管理と関係性の管理の二つから構成される)が高くなければ成功はおぼつかない。間違ってはいけないのは、「マネージャーとしての能力の不足する人をポストからはずすのではない」ということだ。「自分らしさによる選択を認める」のである。

キャリアの分岐点は、他人をマネージする仕事のほかにもいろいろある。次回はそのほかの分岐点についても考えてみよう。

 

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