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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.37  グローバルな競争と人材開発(1)
      グローバル化が人材開発に与える影響

グローバル競争の特質を考えなければならない

 これまで人材開発の個別の問題に触れてきたが、グローバル競争の時代という文脈のなかで考えると、人材開発についての考え方はどのように変化するであろうか。

人材開発にかかわる最も基本的な課題は

1)どのような人材が必要か、必要な理由は何か

2)どのように育成するか

の二つであるので、まずこの課題にグローバル化が与える影響について考えなければならない。1)がはっきりしなければ、2)を考えることはできないので、1)から取り掛かることにしよう。

1)の問題に答えるためには、現代の競争が、「日本企業にとって」どのようなものか考える必要がある。グローバルな競争なので、国籍には関係なく「企業にとって」が本当かもしれないが、「日本企業にとって」とした理由は、真のグローバル市場は存在しないのと同様、真のグローバル企業というモデルはまだ存在せず、出身国の経営方式の影響を受けた、それぞれ独自の個性を持つ多国籍企業があるだけという考え方による。(コラムVOL.4「世界均質化か、それとも多様化か」参照)

このコラム21C型人材マネジメント、は「歩きながら考える」というのが基本姿勢だが、概ねの方向を決めて歩き出すための手がかりは必要ということで、コラムVOL.2で「競争の仕方」に、コラムVOL.3で「グローバリゼーションの影響」について触れた。しかし、その分析は、人材マネジメントの大枠を考えるためのもので、具体的な人材開発というテーマを考えるには大雑把過ぎる。
グローバルな文脈で人材開発を考えるためには、グローバルな競争とはどのような特質を持つものなのかを踏み込んで考え、その上で、それに対応できる人材とはどのような人材なのかという人材像を明らかにし、育成の手段を考える必要がある。
 

世界中に競争相手とサプライヤーがいる

 グローバルな競争のもっとも基本的な性格は、世界中に、競争相手と部品(ITや法務など企業向けのサービスを含む)のサプライヤーがいることである。ものの造り方についていえば、全てを自分で行うのではなく自分が得意な部分のみを行い、そうでない部分は他の人に頼むという水平展開型、モジュール型とよばれる方式が広がったことであろう。
これに対して日本企業のものの造り方の主流は、垂直統合型、摺り合わせ型で、ものを造る工程の大部分、重要部品を作ることから、設計、製造、検査、保守までバリュー・チェインの全て、を自分でおこなう方式である。

それぞれの方式には、それぞれ優れた点が存在し、どちらを選択するかはビジネス・モデルによると考えられる。ビジネス・モデルは、自分の強み、弱みを認識した上で、顧客および顧客に提供する価値、競争の勝ち方を考えて造られるからである。

従来の日本企業の問題点は、ビジネス・モデルという概念が希薄であるため、どの企業も価格と品質で競争しがちであったが、グローバルな競争に直面し、徐々に修正を迫られているのが現状であろう。

 

垂直統合型をどのように修正するか

 価格と品質で勝負する日本企業が直面した問題は、水平展開型製品のコストの低さである。つい2〜3年前はハイテク製品であった液晶テレビもいまや一般商品化しているが、これは世界中から安い部品を集めて組み立てるホワイトボックスと呼ばれるノーブランド製品のせいである。

問題は部品にとどまらない。日本企業の場合は、製品のみならず、人事勤労の仕掛けや業務管理の仕掛けも全て独自システムなので、そのためのスタッフをかかえて仕事をせざるをえず間接部門が重い。これに対し、海外には、間接業務などをアウトソース外注化することにより、日本より身軽な企業が数多く存在する。

もう一つは、製品そのものにかかわる問題である。先進国の市場の伸びは低迷しているので、成熟製品にかわる新しいハイテク製品、あるいは新しいコンセプトにもとづく製品を創り出し、新しい需要を喚起する必要が高まっている。一方、新興市場では、市場のニーズにあった製品の投入がもとめられるが、中国やインドの人々が求めるものと日本の人が求めるものは当然異なる。新興国のニーズに対応した製品をどう開発するかという課題である。 次回は、上記の課題にたいする対応策を整理してみよう。

 

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