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21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.41  グローバルな競争と人材開発(5) 飛び級と、進級しないという選択

飛び級による問題

 海外に販売子会社を持つというプロセスを経ずに海外生産を始める場合は、フェーズ1を飛ばしフェーズ2(前期)からスタートすることになる。この場合は、必要な人材は海外工場の立ち上げが出来る人だが、海外に工場を立ち上げた経験がないと、どのような情報や手続きが必要か十分にイメージすることが出来ない。

実際は、日本での工場建設の経験から必要と類推できる項目以外にも、多くの情報が必要になってくる。例えば、日本人学校は近くにあるか、日本食はどこで入手できるか、日本語が通じる医師は近くにいるかなどは代表的なものだが、「フランスでアパートに住もうとすると、電機ドリル、脚立、ドライバーやペンチなど多くの工具が必要になる」といった類のことは、現地に住んだ経験がないとわからない。フェーズ1の経験があるかないかで、大きな違いがでてくる理由である。

 現在では、既に多くの部品や材料のメーカーが海外に進出しているため、フェーズ1、フェーズ2(前期)を飛ばしてフェーズ2(後期)からスタートする場合も多い。この場合は、直接海外オペレーションに携わる人材の不足だけでなく、いきなり、内なる国際化の問題にぶつかることになり、困難はさらに大きい。

なぜなら、フェーズ2(前期)の段階では、生産関係の人材と経理など小数の間接部門の人が海外に出て行くかたちなので、国内で仕事をしている人は、自分の仕事と海外の事業がどのように関連しているか十分には理解できないためである。事業部、工場に海外国内の生産量や機種などを調整する部署が出来ても、現地側の意見と国内の意見は利害が対立し調整は大変である。問題解決には、海外工場での勤務を終えた人が国内の工場事業部のしかるべき地位につき、現地の事情を良く分かった上で判断するといった状況が生まれなければならないが、そのためには時間が必要である。

 

進級しないという選択

 飛び級と言う問題だけでなく、自己のビジネスモデルから判断して、例えばフェーズ2(後期)からフェーズ3にあえて進級しないというケースもある。人件費が高くなったので、タイや中国の部品製造工場をベトナムに移すなどがこの事例で、研究開発に優れているというよりは汎用品、量産品の製造技術にすぐれ、工場の建設に関するノウハウを強みとする会社にみられるケースである。今後生産拠点として活用できそうな地域についての情報収集は常に怠らず、そのような活動ができる人材を育てたり予め採用したりしている。

 途上国に工場を建設する場合、人件費の安さだけに頼ると問題が生ずる。人件費は本国の10分の1だが、同じ品質にするのに4年、しかし4年後でもコストは本国の2倍というケースがおこる。理由は、機械や設備のメンテナンスあるいは不良対策に熟練をようするため、この部分がネックになってコストがさがらないということが起こるからである。
 

台湾、韓国という競争相手の登場

日本が、TVやビデオといった家電や半導体、コンピューター(ハード)といった製品で世界中に工場を作った時代と現在の大きな違いは、台湾、韓国という競争相手が成長し、やはり輸出代替から入って現地生産に移行というグローバル化プロセスをたどっていることである。フェーズ3にある日本企業は、フェーズ2にある韓国、台湾企業と現地の人材を争わなければいけない。

また、これからフェーズ2に参入を図る日本企業は、フェーズ1を経験の上フェーズ2に到達している、あるいは既にフェーズ3レベルに到達している韓国、台湾企業とグローバル化競争をしなければならず、不利は免れない。一方で、新たに海外進出する分野の企業は、経験不足な割には、先行した産業の経験を学ぶことをしていない感じがある。経験が整理されていないということもあるが、自分の産業は他の産業とは異なるという思い込みが強いためでもある。このため、ある意味では、グローバル人材の育成は振り出しに戻った形になっている。次回はこの点について検討してみよう。

 

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