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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.42  グローバルな競争と人材開発(6) 振り出しに戻ったグローバル人材開発

比較の物差しとしての海外事業発展段階モデル

  家電、半導体、コンピューターのハードの海外事業経験をもとに作った5段階のモデルは、そのほかの産業の海外事業の状況を判断する物差しとして活用できる。例えば、ある企業の海外オペレーションが、現在フェーズ2の前期にあると判断できれば、今後起こりそうな問題や、それに対処するために必要な能力や人材などを、過去の経験からある程度類推することができるという考え方である。

  こういう視点から眺めてみると、現在の日本は、この発展段階を振り出しに戻ってもう一度たどり直している感じがする。特に人材育成の面では、海外事業に携わったベテランの多くが、定年により第一線を離れ始めているので、過去の「国際化要員の育成」プロセスを、新しい状況にあわせ修正し「グローバル人材開発」と看板を架け替えた上で、再度たどり直す必要があると考える。

 

日本の海外事業の発展段階

  はじめに、現在の日本経済全体を発展段階モデルに当てはめてみると、どのあたりのフェーズに位置するか、考えてみよう。

海外生産が盛んになると三つのことが起こる。
(1)日本からの輸出額が減る輸出代替効果
(2)部品や原材料の輸出を増やす輸出誘発効果
(3)海外生産したものが日本に流入する逆輸出効果

2008年度の数字は第一生命経済研究所によると、日本の生産を減らすことにつながる(1)が47兆9000億、(2)が10兆3000億、生産を増加させる(3)が22兆6000億で、差し引き35兆6000億、生産が減少、これは、国内の製造品出荷額334兆の10%強にあたるとされ、雇用面でも96万人減少させ、製造業就業者1000万の10%弱の影響があったと推計されている。(5月31日日経新聞)

これらの数値から判断すると、日本全体の海外事業の発展段階は、海外からの製品の持ち帰りがいろいろな影響を与え始める、フェーズ3の初期に相当すると考えられる。家電事業でいえば、持ち帰りが始まり、国内の工場の整理統合が徐々におこなわれ始めたあたりに相当する。
  日本全体が平均でフェーズ3の初期であるということは、再び、フェーズ3,4を経験し直すということで、グローバル人材開発にも大きな影響が出てくる時期ということができる。なぜなら、フェーズ3にいたって初めて海外事業は、特別なことでなく普通のことに転化していくからである。今後、日本全体で発生する課題は、以下のようなことと想像できる。

1 組織的には、地域に対し会社を代表したり、子会社の活動を支援したりする、地域本社機能を持つ会社が必要になり、そのための専門スタッフの充実が必要になってくる。そのため、優秀なローカルスタッフの採用を可能にする処遇制度の導入や優秀なローカルスタッフと対等にわたりあえる日本人スタッフの育成が課題の一つになってくる。

2 海外の工場から日本向けだけでなく近隣の地域に製品輸出がおこなわれるので子会社の海外事業要員の充実が必要になる。(例えば、海外子会社の日本駐在事務所や営業所、○○アジアのタイ子会社など、親会社から見ると孫会社にあたる海外子会社の要員)海外子会社における人材育成の仕組みの構築がテーマとなる。

3 日本国内の生産拠点の整理統合と人員の再配置が必要になる。

などがそれである。

日本全体はフェーズ3にあるとして、個別の産業や企業はそれぞれのフェーズの問題解決に取り組まなければならないが、たとえば自動車産業は、どのあたりのフェーズにあるのであろうか、具体的な人材開発を考える上で、次回は、その辺りを検討してみよう。

 

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