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21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.44  グローバルな競争と人材開発(8) フェーズ3の問題点

復習 フェーズ1から2(後期)の特徴

  フェーズ3の問題点を考える前に、ザッと発展段階の特徴点をおさらいしておこう。

 フェーズ1の特徴は「輸出」である。海外の組織は駐在事務所、それが発展して販売子会社、海外勤務をする人は大部分が営業関係者、それと少しの経理関係者。

 フェーズ2(前期)の特徴は「輸出代替」。販売子会社が世界中に10社程度、製造子会社は5社未満、国内には国際事業部といった組織が生まれている段階。必要な人材は新会社立ち上げ要員とくに製造現場関係者で、管理部門からの海外勤務も増えてくる。直面する問題は中小企業問題と俗にいわれるもの。

 フェーズ2(後期)の特徴は「海外生産の本格化」で、販売子会社の中には複数の国を対象とするものが生まれる。製造会社も本格的な設計部門を持つものが出て、部品の現地調達も盛んになる。一般的には、汎用品は海外、高級品は日本で生産という区分は残る。

おこる問題も、優秀な人材の退職や労働組合問題など中堅企業に一般的な問題に変わってくる。海外生産が本格化したことにより国内の生産に対する影響が大きくなるため、国内で仕事をする人も海外法人の担当者との接点が拡大、海外事業に対する理解が求められるようになる。いわゆる内なる国際化の要求が高まってくる。事業の発展に人材育成が追い付かず、海外要員の不足が問題になる。
 

フェーズ3の特徴

  フェーズ3の特徴を一言でいうと、「海外市場の確保と海外リソースの活用」である。この時期になると海外事業の数も増え、地域別に本社機能が必要になってくる。日立アジアとか日立ヨーロッパという名称の会社がそれで、財務、法務、人事、広報などの専門スタッフを置き、地域の子会社の活動を支援したり、地域に対して会社を代表したりする。

デザイン部門や研究部門を持つケースもでてくる。このように海外活動が拡大すると、海外勤務に就く人の範囲も役員クラスから入社3〜4年生までに広がる。そのため海外に勤務することなど自分では想定していなかった人にまで機会が回ってくる。普通の人が海外勤務をするようになる時期といってよい。

 

フェーズ3の問題点

  この時期、問題点の数は増大する。

1)優れた専門家を使う、あるいは一緒に仕事をするためには、外国人と仕事をした経験を持つ専門家でなければうまくいかない。そのため海外勤務経験のある部課長クラスにニーズが偏り、二回目、三回目の海外勤務となる人が出てくるが、子供の教育や両親の介護など個人生活上の問題が深刻化する。

2)日本人と外国人のコミュニケーション問題に加え、外国人と外国人のクロスカルチャーコミュニケーション問題が重要になる。

3)フェーズ2に採用した人材と、この時期に採用した専門家の間で権限争いがおこり、しばしば退職の原因となる。

4)海外経験が不足した人が引き起こす問題が重大化する。

5)国内の工場の整理・統合問題が深刻になる。

6)撤退や製品転換をせまられる海外事業が出てくる。
 

日本の問題点

  日本全体はフェーズ3にあるので、本来、海外シフトはもっと進むはずであった。

しかし、円安(物価上昇率の差からおこりうる円の水準からみての意)のお蔭で国内生産が続けられた。自動車産業がフェーズ2にとどっまっていたという幸運もあった。不況で難しい問題に取り組む余裕がなかったのも原因の一つであろう。しかし今後は、円高、円安にかかわらず国内の空洞化は避けられない。フェーズ3の特徴は海外市場の確保であり、新興国へのシフトは企業の生存に大きくかかわるからである。
先進的な会社は別にして、フェーズ4は日本全体としては将来の問題であるので、ここではひとまずおいて、次回はフェーズ毎の人材育成策を考えてみたい。前提とする考え方は、フェーズ3の企業は、フェーズ1から2までの対策はすべて実行済みであるとして、である。従って、飛び級でフェーズ2(後期)から海外事業に参入する場合は、これまで必要とされた対策は、すべて一挙に実行するということになる。
 

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